今、「分譲マンションを売る人が続出している」という話を聞いたことはないでしょうか?
数十年前と比べると、中古マンションの流通市場は拡大しており、取引価格も高騰しています。しかし、近年で売る人が続出しているというのは本当なのでしょうか?
本記事では、分譲マンションを売る人が続出しているのが事実か検証しつつ、分譲マンションを高く売るためのタイミングや方法などを解説します。
分譲マンションを売る人が続出しているのは本当か
この話の事実を確認するために、中古マンションの成約データを振り返ってみましょう。
まず2012年~2022年の過去10年間の新規物件登録件数(新たに物件を売り出した人の数)を、下記のグラフにまとめました。
※公益財団法人東日本不動産流通機構「レインズデータライブラリー」を基に筆者作成
このグラフを見ると、全体的に顕著に売る人が増えているという傾向はみられず、むしろ2018年をピークに新規物件登録件数が減少していることが分かります。
では今度は、データの所得期間をぐっと絞り、2022年の1月~10月という短期間ではどのような変化があったか見ていきましょう。
※公益財団法人東日本不動産流通機構「レインズデータライブラリー」を基に筆者作成
こちらのグラフからは、1月から10月にかけて一貫してはいないものの、全体的な傾向としては新規登録件数が上昇していることが見て取れます。
以上の二つのデータをまとめると、「分譲マンションの売り出す人は、長期的には増えていないが、2022年という直近の期間に絞るとやや増加傾向にある」と言えそうです。
また、今回用いたデータは首都圏全体の平均値を用いています。そのため、首都圏外のエリアや、非常に限定的な特定のエリア(○○市、○○区など)では、より顕著にマンションを売る人が増えている可能性も残されています。
分譲マンションを売る人が増えている理由
ここからは、「分譲マンションを売る人が増えている」という前提を定めたうえで、その理由について解説します。
- 分譲マンションの売却相場が上がっている
- マンションが古くなっている
- リモートワークの普及
分譲マンション売却相場が上がっている
分譲マンションの売却相場は長期的に上昇しており、購入時金額よりも売却時金額の方が高くなる見込みができたことで、売却を検討している人は多いでしょう。
分譲マンションの売却相場は、次のグラフのように上がっています。
※公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」を基に筆者作成
マンションが古くなってきている
マンションの築年数が一定の水準に達すると、修繕積立金の値上がったり、設備が老朽化したりすることを理由に売る人が増えています。
マンションは1970年代に建設が始まり、築年数が40年、50年経過するマンションが増えてきています。築50年くらいのマンションは老朽化が進み、建て替えの話が出てくる年数です。そのため、建て替えに合わせてマンションを売る人が多いと推定されます。
また、築20年くらいになると、2回目の大規模修繕の時期に入ります。1回目の大規模修繕を行うときには修繕積立金が貯まっているとしても、2回目の大規模修繕のときには修繕積立金が足らないという事態に陥るマンションが出てきます。
そうなると、修繕積立金の値上げを余儀なくされるため、より管理状況が良好なマンションに住み替えることを検討する人が増えると考えられます。
リモートワークの普及
近年、コロナウイルスの影響によりリモートワークが普及し、都市圏で働く必要性が低下しています。そのため、都市圏のマンションを売って、郊外に移転する人が増えてきています。
また、リモートワークが増えたことにより家の中にワークスペースを確保しなければならず、室内が手狭になったと感じる方、家族と過ごす時間が増え、より広いリビングに変えたいと感じる方もいるようです。手狭に感じたマンションを売り、広いマンションに住み替えする需要も高くなってきています。
このようにリモートワークの普及も、マンションを売る人の増加に寄与していると考えられます。
分譲マンションを売る人が多いときの売りやすさ
結論から言うと、分譲マンションを売る人が多いと、マンションは売りにくくなる傾向があると考えておきましょう。
本章では、なぜ分譲マンションを売る人が多いと売れにくくなるのか解説します。
- 競合マンションが増える
- 買い手の購入基準が上がる
競合マンションが増える
自分と同じエリアや近所、さらに同じマンション内での売り出し物件が多くなると、競合となるマンションが増えることになります。
特に、人気のある築浅物件や自分の物件とスペックが似ている物件が多いと、価格競争が起きやすく、結果的に安い物件から売れることになりやすいです。
条件の悪いマンションは売れ残ってしまい、売却に時間がかかったり、大幅な値引き交渉を受けてしまいます。
買い手の購入基準が上がる
マンションの需要(買い手)に対して供給(売り手)が増えてしまうと、買い手市場が形成されます。
そうなると、買い手が様々なマンションを比較できるようになり、購入基準が高くなってしまいます。そのため、室内の状況が悪い、築年数が古い、立地が悪いなどネガティブな条件を持っている物件は購入基準から外れやすくなってしまうでしょう。
ただし、2023年3月現在ではマンションの市場価格は下落していないため、売り手のほうが有利な市場が続いていると言えそうです。
分譲マンションを売る人が多いときの売却価格
分譲マンションを売る人が多いと、基本的には売れる価格は下がってしまいます。
マンションの価格は、基本的に需要と供給のバランスによって決定されます。そのため、供給側の売り出し物件が増えると、価格は下落しやすくなるでしょう。
ただしマンションの場合は、供給サイドと供給サイドが明確に分かれていない(住み替え等で売却と購入を同時に行う人が多い)ので、単純に「売る人が多い=価格の低下」にならない場合があります。また、市場全体で価格が下落しても、需要が落ちない人気エリアはむしろ価格が上がり続けるケースもあります。
なので、物件の売却のタイミングを考える際は、市場全体の値動きよりも、自分の住んでいるエリアやマンションの価値を個別で考えるほうが参考になるはずです。
マンションを高く売るための方法
マンションの売却をするのであれば、誰しも高く売りたいと思うものです。しかし、高くマンションを売るためにはそれなりの工夫が必要になります。マンションをなるべく高く売却するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
- 時間をかけて売却活動を行う
- 優秀な担当者と出会う
- 適切なプライシング
- 内覧に工夫を施す
代表的な4つの方法を紹介していきます。
時間をかけて売却活動を行う
マンションをなるべく高く売るための1つ目の方法は、「時間をかけて売却活動を行うこと」です。
一般的にマンションの売却には平均3〜6ヵ月ほどの期間を有します。あまりに期間が短すぎると焦って不必要に値下げをして結果的に思っていたように売却ができないリスクがあります。
時間をかけて戦略を練り、売却活動を進めていくことで「どうしてもこのマンションが欲しい!」と思ってくれる購入希望者が現れる確率を高めることができます。
優秀な担当者と出会う
マンションを高く売れるかどうかは、優秀な担当者と出会えるかどうかが重要なカギを握っていると言っても過言ではありません。
優秀な担当者を見抜くためには、以下の項目をチェックするようにしましょう。
- 査定価格や販売戦略を根拠をもって説明することができる。
- 長期的な見通しを持っている(この時期までに売れなかったら、これくらい値下げをするという、見通しをもっている)
- 過去の販売実績が豊富。
- 連絡が取りやすく、レスポンスが早い。
- 人当たりが良く、コミュニケーション能力が高い。
大手の有名な不動産会社であっても、営業マンの実力にはかなりばらつきがありますし、ノルマを重視する会社の場合は、顧客の要望を無視した提案をしてくることもあります。契約する不動産会社は会社の評判よりも、担当者の実力で選んだ方がよいでしょう。
適切なプライシング
マンションを高く売るためには、状況に応じて適切なプライシングをすることが重要です。
例えば、最初は相場より1割ほど高めに売り出し、買い手が現れるまで少しずつ値下げしていく戦略を取れば、売却期間は長くなるリスクはありますが、高値で売れる可能性は高まります。
「物件をいくらで売り出すか」「値下げはどのタイミングでどのくらい行うか」「購入希望者からの価格交渉にどの程度応じるか」などは素人では判断が難しいため、担当者に任せるのが得策です。優秀な担当者であれば、絶妙なプライシングの方法を熟知しているはずです。
内覧に工夫を施す
購入希望者の購入意欲をより掻き立てるためには、内乱に工夫を施すのも重要なポイントです。
まずは物件の魅力を整理しておきましょう。担当者と一緒に購入希望者にどのように魅力を伝えるか戦略を練ることが大切です。
また、部屋をきれいに掃除するだけでも印象がガラッと変わって見えます。特に、玄関・水回り・ベランダは身に付きやすいので、重点的に掃除することをおすすめします。汚れがひどいようであれば、数万円で依頼できるハウスクリーニングの利用も検討してみましょう。
可能であれば、先に新居へ引っ越してしまい、部屋を空室にできれば、内覧の成功率はぐっと引き上がります。なぜなら、空室の方が物件そのものの魅力が伝わりますし、購入希望者が気兼ねなく部屋の様子を見られるためです。
分譲マンションを高く売るために注意すべきこと
分譲マンションを高く売るための対策がある一方、高く売るときにやってはいけないことや注意しなければならないことがあります。本章では、分譲マンションを高く売るために注意すべきことを解説します。
- 売り出し前にリフォームにする
- 相場からかけ離れた価格で売り出す
- 不動産会社から囲い込みを受ける
売出し前にリフォームする
売り出し前にリフォームするのは、リスクが高いためやめておきましょう。
リフォームでかかった費用を売り出し価格に上乗せして販売するのは難しく、リフォーム費用分だけ最終的な収益がマイナスになる可能性があります。
価格にリフォーム費用を上乗せして販売するのが難しい理由は、実施リフォームが不動産購入検討者の趣味に合わないケースがある、素人判断のリフォーム物件は買取再販会社の物件に見劣りする、などの理由が挙げられます。
多少の汚れであれば、ハウスクリーニングでキレイにする程度に抑えておきましょう。どうしてもリフォームをしないといけないような室内状態のときは、不動産会社に相談してリフォームしたほうがよいのか検討すべきです。
相場からかけ離れた価格で売り出す
思い入れのあるマンションを売るときには、誰もが高く売りたい気持ちになると思います。しかし、相場からかけ離れた価格で売り出してはいけません。
不動産購入検討者は不動産のおおよその相場を把握しているので、相場からかけ離れた価格のマンションは検討からすぐに外され、売れ残りの原因になります。
売れ残ってしまうと、「何か問題のある物件ではないか」という警戒心を持たれやすくなり、問い合わせが減ったり、値下げ交渉を受けやすくなってしまいます。
欲の出しすぎは避け、高く売り出すとしても「相場価格+1割」くらいが上限だと考えておきましょう。
不動産仲介会社から囲い込みを受ける
仲介で物件を売却する際は、不動産仲介会社からの囲い込みには注意しましょう。
囲い込みとは、売却依頼したマンション情報を意図的に他社の不動産仲介会社に流さないことを言います。つまり、売却依頼をした不動産仲介会社が情報を囲い込んでいる状態です。
囲い込みを受けてしまうと、売却期間の長期化や、強引な値下げの要求を受けやすくなるというデメリットがあります。
囲い込みは専属専任・専任媒介契約を締結したときに行われます。専属専任・専任媒介契約を不動産仲介会社と締結したときには、囲い込みはしないよう事前に伝えて囲い込みを防止します。
囲い込みについて深く知りたい方は、以下の記事をご覧ください。