不動産の名義変更を自分で行う方法 | 必要書類・費用・手順を解説

不動産の名義変更を自分で行う方法 その他

相続や売買などによって、不動産の所有者が変わる場合、名義変更を行う必要があります。

この記事では、不動産の名義変更を自分で行う方法について、パターン別の手順や必要書類などについて解説しています。

司法書士に依頼した場合の、費用感についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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不動産における名義変更とは?

不動産における名義には、大きく分けて2つあります。それは「住宅ローンの名義」「登記簿上の名義」です。

住宅ローンの名義とは、金融機関で住宅ローンを組む際の名義人、つまり債務者としての名義のことです。登記簿上の名義とは、法務局にて記録されている不動産の所有者を記す登記簿に、所有者として記載される名義のことです。

住宅ローンの名義を変更することはできませんので、不動産における名義変更といえば、登記簿上の名義を変更することを指します。登記簿上に情報を新たに記録することを登記といい、所有者が変わるタイミングで行うのが所有権移転登記です。

不動産の名義変更は自分でできる?

所有権移転登記は自分でも行えます。ただし、売買による所有権移転登記の手続きは、専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。

それは住宅ローンを組む際の条件として、ほとんどの場合で所有権移転登記を司法書士が行うことと設定されているからです。

売買は自分だけでなく、相手があるものです。住宅ローンは、購入する家を担保に設定するものなので、ミスなく所有権移転登記をするために、司法書士が行うことが条件となっています。

不動産の名義変更が必要になるタイミング

不動産の名義は法務局の登記簿で管理されており、当事者が自分で変更の申請をしなければなりません。不動産の名義変更のことを、法律上は所有権移転登記といいます。

不動産の名義変更が必要になるのは主に「相続」「売買」「贈与」「離婚」の3つのタイミングです。

相続による名義変更

親が亡くなり、子である自分が相続した場合の不動産の名義変更のことを相続登記といいます。

相続による不動産の名義変更は、売買や贈与の場合とは異なり、2024年の4月1日から義務化されました

過去の相続についても対象となり、怠った場合には過料も発生します。相続開始から3年以内に登記を行うことが義務化されるので、なるべく早めに名義変更を行う必要があります。

相続登記は、自分で行うことが可能です。

また、2026年4月1日からは、住所や氏名が変更になった場合の住所変更登記・氏名変更登記も義務化されます。住所や氏名に変更があった日から2年以内に登記を行う必要があります。これらも相続登記と同様に、過去の登記も対象となり、過料も設けられているので怠らないように注意してください。

住所変更登記・氏名変更登記も自分で行えます。

売買による不動産の名義変更

自身が不動産会社や個人から不動産を購入する際も、自身の不動産を売却する際も、不動産の名義変更が必要になります。売買時の不動産の名義変更は義務ではないものの、実質的には必須です。

その理由は、不動産の売買は自分ひとりで完結するものではなく、相手があってのものだからです。不動産の購入時に組む住宅ローンは、その不動産を担保にしてお金を借りています。不動産の名義が売主側に残っていれば、購入者はローンを組むことができないので、その点からも名義変更が必要になります。

売買の場合は確実に名義変更を行うために、金融機関は司法書士が手続きをすることを、住宅ローンを組む際の条件としています。つまりこの場合は自分で名義変更を行うことはできません。

仮に住宅ローンを組まない場合であっても、円滑な取引ができるよう、売買においては司法書士に所有権移転登記の依頼をすることをおすすめします。

生前贈与による不動産の名義変更

両親や祖父母などが健在のときに不動産を譲りうける生前贈与においても、なるべく早く不動産の名義変更をした方がよいです。

名義変更をする前に贈与する側の人物(贈与者)が亡くなってしまうと、不動産を譲りうけたのが自分である、という証明ができなくなります。贈与者の死後に手続きを行うと、生前贈与ではなく相続となるため、贈与者が望んでいたかたちとは別のものになってしまう可能性があります。

贈与に伴う名義変更は、自分で行うことが可能です。

離婚による不動産の名義変更

離婚による不動産名義の変更では「住宅ローンの名義」と「登記簿上の名義」の2つを考える必要があります。

住宅ローンを完済している場合

離婚をすると夫婦が婚姻中に築いた共有財産を基本的に半分ずつ分配する「財産分与」を行います。しかし、不動産は半分に分けられないので、売却して現金化するのが一般的です。

ただし、何らかの事情で一方が住み続ける場合は所有権移登記が必要になることがあります。具体的には夫もしくは妻の単独名義である自宅に、名義でない方が住み続ける場合です。また、共同名義だった自宅に、どちらか片方が住み続ける場合も、単独名義に変更するために「持分移転登記」を行います。

なお、共同名義の自宅を離婚後も共有名義のままにしておくことはおすすめできません。なぜなら、将来的に売却を考えた際は2人の同意が必要になり、トラブルの原因となりやすいからです。

この場合の登記は比較的シンプルなので、自分でも行えます。

住宅ローンを完済していない場合

住宅ローンが残った状態で離婚し、一方が住み続ける場合には注意点があります。登記簿上の単独名義の人が住み続けるのなら問題はありませんが、そうでない方が住み続ける場合は、住宅ローンの規約違反となることがあります。住宅ローンは多くの場合、「住宅ローンの名義人が住む」ことがお金を貸す条件となっているからです。

そのため、登記簿上で夫(妻)名義の自宅を妻(夫)名義に変更する際には、金融機関の許可が必要になることがあります。これは共有名義の状態から一方が住み続ける場合になる際も同様です。

金融機関の許可が下りないものの、登記簿上の名義を変更したい場合には、先に住宅ローンの名義変更が必要です。新たに名義となりたい人が新しく住宅ローンを組み直す(借換えする)ことになります。これが可能かどうかは、新しく名義になる人の支払い能力に左右されます。

ただし、住宅ローンの名義でない方が住み続けるのはリスクがあります。住宅ローンの支払い義務は、住宅ローンの名義人にありますが、その名義人が家を出るとなると滞納が発生しやすいからです。滞納が発生すると、ほとんどのケースで連帯保証人となっている、家に住み続ける側に請求されます。

住み続ける方が住宅ローンを支払う、ということでないのなら、売却も検討することをおすすめします。

自分で不動産の名義変更をする際のおおまかな流れ

不動産の名義変更は、どの場合であっても基本的な流れは同じです。

  1. 土地に対応する法務局を調べる
  2. 必要書類と登記申請書を管轄法務局に提出
  3. 登記識別情報通知を受け取る

土地に対応する法務局を調べる

不動産はその所在地で管轄が分かれています。そのため、自宅から最寄りの法務局が、名義変更をしたい不動産を管轄しているとは限りません。あらかじめ、不動産がどの法務局の管轄なのかを調べておく必要があります。

必要書類と登記申請書を管轄法務局に提出

必要書類と所有権移転登記の申請書の準備ができたら、管轄の法務局に提出します。

提出は郵送でも可能ですが、窓口と異なり、書類の不備のチェックをしてもらえないため、可能な限り、窓口での提出がおすすめです。

登記識別情報通知を受け取る

書類の提出から、名義変更の完了までは通常1、2週間ほどかかります。

名義変更が問題なく完了したことの証明として登記識別情報通知が発行されます。ここで、登記簿上の不動産の名義変更が完了となります。

不動産の名義変更に必要な書類

名義変更に必要となる書類は、相続かそれ以外の場合かによって異なります。それぞれについて確認していきましょう

相続の場合の必要書類

不動産を親から引き継ぐ人を相続人、不動産を譲る人(故人)を被相続人といいます。
相続人が用意する必要書類は以下の通りです。相続人が複数いる場合は、全員分の書類が必要です。

必要なもの・書類 入手先
所有権移転登記の申請書 自身が作成。法務局にフォーマットあり。
本人確認書類  
相続人の戸籍謄本 市区町村の役所
被相続人の戸籍謄本 市区町村の役所
相続人の住民票の写し 市区町村の役所
被相続人の住民票除票

または戸籍の附表

市区町村の役所
登記識別情報 被相続人が亡くなったときの住所が登記上の住所と異なる場合に必要。法務局で取得。
印鑑証明書 市区町村の役所・証明サービスコーナー 
実印  
相続関係説明図 自身で作成
固定資産評価証明書 各市区町村の役所
遺言書または遺産分割協議書 遺言や協議にもとづいて相続する場合のみ必要
司法書士への委任状 司法書士に依頼する場合のみ必要

売買、贈与の場合の必要書類

相続の場合は、相手が亡くなっているので自分(または司法書士)が一人で書類を用意しますが、売買や贈与の場合は売る側と買う側、贈る側ともらう側といった二者間の作業になるので、立場によって必要な書類が異なります。

【譲る(売却する側)側が用意する書類】

必要なもの・書類 入手先
所有権移転登記の申請書 自身が作成。法務局にフォーマットあり。
委任状  
身分証明書  
登記識別情報 法務局で取得
住民票の写し 市区町村の役所
  (現住所が登記上の住所と異なる場合のみ)
売買契約書

(贈与の場合は贈与契約書)

印鑑証明書 市区町村の役所・証明サービスコーナー 
実印  
固定資産評価証明書 各市区町村の役所
司法書士への委任状 司法書士に依頼する場合のみ必要

 【取得する(購入する)側が用意する書類】

必要なもの・書類 入手先
所有権移転登記の申請書 自身が作成。法務局にフォーマットあり。
身分証明書  
住民票の写し 市区町村の役所
認印 実印である必要はない。抵当権の設定を同時に行う場合は実印と印鑑証明書が必要。
司法書士への委任状 司法書士に依頼する場合のみ必要

離婚の場合の必要書類

離婚に伴って所有権移転登記をする際の必要書類は以下の通りです。

必要なもの・書類 入手先
所有権移転登記の申請書 自身が作成。法務局にフォーマットあり。
本人確認書類
離婚日の記載がある戸籍謄本 市区町村の役所

どちらか一方のものでOK

譲り受ける側の住民票の写し 市区町村の役所
登記識別情報 法務局で取得。
不動産を譲る側の印鑑証明書 市区町村の役所・証明サービスコーナー
不動産を譲る側の実印
離婚協議書か

財産分与契約書

自身で作成
固定資産評価証明書 各市区町村の役所
司法書士への委任状 司法書士に依頼する場合のみ必要

自分で不動産の名義変更をする際の注意点

ここからは、自分で所有権移転登記の手続きを行う際の注意点を紹介します。売買の場合は、司法書士による登記が必須の場合がほとんどのため、ここでは相続・贈与・離婚の3つについて併せて紹介します。

大まかな流れは先述した通りです。
1.土地に対応する法務局を調べる
2.必要書類と登記申請書を管轄法務局に提出
3.登記識別情報通知を受け取る

相続登記の手続きを自分でやる際の注意点

相続登記ではつまずきやすいのは必要な書類を集める段階です。これまで相続登記が義務化されていなかった関係で、先祖代々の土地については相続登記を行おうとすると何代もさかのぼるのが必要なことがあります。兄弟同士の話し合いならまだしも、相続人の1人が亡くなっているとその配偶者や子どもと話し合うことになります。さらに言えば、何代も前のものであれば、相続人が全員亡くなっているケースすらあります。
そのような場合は、戸籍をたどることさえ困難になるため、自分で手続きをするのではなく、司法書士に依頼する方がよいでしょう。

贈与による名義変更を自分でやる際の注意点

贈与による所有権移転登記の手続きは、贈与を証明する「贈与契約書」が必要になる点以外は比較的スムーズに行えます。

贈与で注意すべきなのは、手続き自体よりも「贈与税」です。贈与税を支払うのは、贈与された方、不動産を譲り受けた方です。贈与税は相手との関係性で税金の控除額が変わります。親から子、祖父母から孫への場合は控除額が大きいですが、その他の場合は少なくなります。

また、贈与税の対象となる不動産の価格が高いほど税率も高くなります。当然税金は現金で支払う必要があります。贈与税は、数十万から数千万円となることもあるので、価値の高い不動産を贈与された場合は注意が必要です。

離婚による名義変更を自分でやる際の注意点

離婚による所有権移転登記では、住み続ける人への所有権移転登記を行います。共有名義だと双方の同意なしには売却ができず、将来的なトラブルにつながるので必ず手続きをするようにしましょう。
離婚時の所有権移転登記で特に注意したいのは、住宅ローンの残債の有無です。住宅ローンが残っている場合は、所有権移転登記を行うと住宅ローンを組んでいる金融機関との契約違反となる可能性があります。住宅ローンが残っている状態で、離婚後にローンの名義人が家を出る場合には、支払いが滞るリスクもあります。住宅ローンが残っている場合は、売却をして完済するか、それが難しいならローンの名義人が住み続けるのがよいでしょう。

不動産の名義変更を司法書士に依頼した際の費用

不動産の名義変更は、売買の場合を除き、自分で行うことも可能です。自分で行うことのメリットは、費用が抑えられることにあります。

しかし、労力を考えると司法書士に依頼することも検討する価値があります。2018年1月に日本司法書士会連合会が実施したアンケートによると、報酬の平均額は以下のようになっています。

内容 報酬額の平均値
売買(登記識別情報なし) 71,997~94,197円
売買(登記識別情報あり) 42,999~64,090円
相続 60,667~78,326円
贈与 41,236~54,505円

報酬アンケート【日本司法書士会連合会】

あくまで平均値ですので、実際の費用感を知りたい場合は、複数の司法書士事務所で見積もりをしてもらうのがよいでしょう。

また、この金額は、司法書士へ支払う手数料のみの金額となっています。後述する税金や書類の取得に必要な費用は含まれていない点には注意してください。

不動産の名義変更にかかる費用

不動産の名義変更を司法書士に依頼しない場合でも、税金や必要書類の取得費など、さまざまな費用がかかります。

不動産の名義変更は、自身が所有者であることを法律上で明確にするためのものですので、費用を支払うのは不動産を譲り受ける側、購入する側となります。

必要な費用を項目ごとに紹介します。

登録免許税

登録免許税とは、登記時に課せられる税金のことです。

登録免許税は土地と建物のそれぞれに課税され、税率はどのような理由(相続・生前贈与・売買)で不動産を取得したかによって異なります。

登録免許税は、固定資産税評価額 × 税率(不動産の所得方法によって異なる)で計算されます。

固定資産税評価額の大まかな目安としては、土地であれば土地の時価の約70%が、建物の場合は新築なら工事金額の約50~60%です。中古物件の場合は築年数などによって変動します。

詳細な固定資産税評価額は、中古の家なら自治体から所有者向けに送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。個人から中古物件を購入する場合は、不動産会社の担当者を通して確認することができます。

登録免許税の税率は以下のようになっています。これが土地と建物それぞれの固定資産税評価額にかけられることになります。

内容 土地の税率 建物の税率
売買 2% 2%(新築の場合は0.4%)
相続 0.4% 0.4%
贈与 2% 2%

※土地の相続の場合に限っては、固定資産税評価額が100万円以下の場合は登録免許税が免除される特例が2025年3月31日まで実施されています。

ただし、土地の相続の場合に限っては、固定資産税評価額が100万円以下の場合は登録免許税が免除される特例が2025年3月31日まで実施されています。

課税額の具体的な金額は、以下のようになります。

固定資産評価額 相続の場合の登録免許税 売買・贈与の場合の登録免許税
500万円 2万円 10万円
1,000万円 4万円 20万円
2,000万円 8万円 40万円
3,000万円 12万円 60万円
5,000万円 20万円 100万円
8,000万円 32万円 160万円
1億円 40万円 200万円

必要書類の取得にかかる手数料

所有権の移転登記にあたってはさまざまな書類が必要になります。市役所で取得するものや、法務局のホームページでテンプレートをダウンロードするなどして、自身で作成するものがあります。

多くの書類の取得には発行手数料という名称で費用がかかります。必要な書類は後述しますが、それぞれ300~500円で取得可能です。

自分で不動産の名義変更を行うのは大きな労力

さまざまな必要書類の用意や、法務局への申請など、不動産の名義変更にはさまざまな工程が必要になります。

自分で名義変更を行うことは、費用面でのメリットはあるものの、慣れない作業に多くの時間が割かれることでしょう。時間に余裕がなかったり、無駄なストレスを避けたい場合は、司法書士へ依頼することも検討するのがおすすめです。

すむたすマガジン編集部

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