「マンションは10年で住み替えるべき」という話を聞いたことはないでしょうか。
この記事ではマンションの住み替えにあたっておさえておきたいポイントと、「10年で住み替えるのがよい」と言われている理由について解説しています。
マンションの住み替えとは
そもそもマンションの住み替えとは、今のマンションを売って新しいマンションないし戸建てを購入することを指します。
新しい住まいは、マンションを売って得たお金で購入するパターンと、新たに住宅ローンを組んで購入するパターンがあります。
住み替え時には住宅ローンの完済が必要!
住み替えを検討する際に最も重要なのが、住宅ローンを完済しなければ、売却ができない点です。
住宅ローンは、売却で得たお金で完済しても問題ありませんが、売却して得られるお金に貯蓄などを充当してもローンが残ってしまう場合は、売却ができないので注意してください。
マンション売却でポイントとなる2つの「年数」
「10年で住み替える」の10年とは何を指しているのでしょうか。
言葉からは「住み始めてから10年」の、「所有年数」という意味に感じられるでしょう。しかし、10年は所有年数だけではなく「築年数」も同時に指しています。
つまり、住み替えを考えるのなら「所有年数」と「築年数」の2つの年数がポイントになるということです。
築年数で考えるマンション売却
マンション売却のタイミングを築年数で考えたとき「10年」にはどのような特徴があるかを考えてみましょう。
マンションの建物としての価値は、年数を経るごとに下がってきます。築年数10年というタイミングは、当然新築よりも価値は下がりますが、古すぎることはなく、設備上の問題もないことがほとんどです。
つまり、マンションの購入を考えている買い手側からすると、築10年の物件は新築よりは安く、設備に目立った不備もないお買い得な物件となりますし、売り手側からもある程度の金額で買い手がつきやすい物件となります。
売り出し中のマンション・戸建ては、不動産会社によって「レインズマーケットインフォメーション(レインズ)」と呼ばれる不動産流通標準情報システムに登録されます。
レインズを運営する公益財団法人東日本不動産流通機構が発表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」によれば、レインズに登録された中古マンションのうち、成約につながった物件の割合が最も多いのは築6~10年の35.2%でした。
中古マンションの新規登録成約率
築年数 | 2021年 | 2022年 |
築0~5年 | 30.5% | 28.6% |
築6~10年 | 40.7% | 35.2% |
築11~15年 | 35.3% | 30.9% |
築16~20年 | 34.9% | 28.1% |
築21~25年 | 28.3% | 22.2% |
築26~30年 | 19.9% | 17.5% |
築31年以上 | 16.4% | 13.9% |
「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」より作成
参考: http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202302.pdf
所有年数で考えるマンション売却
マンションを売却し、利益が発生したときの所得税の税率や、住宅ローン組んだ際の金利負担を抑えるための減税措置が受けられる期間は、所有年数を基準にして定められています。
所有年数によってどのような違いがあるのか、確認していきましょう。
5年より長いとお得!譲渡所得税
マンションを売却し、利益が上がると、それに応じて所得税・復興所得税と住民税が発生します。売却して手元に残った利益を譲渡所得、譲渡所得に対して一定の税率でかけられる所得税と住民税を合わせて譲渡所得税と呼びます。
譲渡所得税率は、不動産の所有期間によって異なります。5年を超えた所有期間だと「長期譲渡所得」となり税率が低くなります。逆に5年以下の所有期間であれば「短期譲渡所得」となり税率が高くなります。つまり、売却して利益が出そうなら所有期間が5年より長くなってから売るのがお得ということです。
所有期間の計算方法は「売却した年の1月1日現在まで」の所有期間に設定されています。
そのため、たとえば2024年の3月末に所有期間が5年を超える場合は、たとえ2024年の4~12月のうちに売却しても2024年1月1日の時点では5年を超えていないので、短期譲渡所得扱いとなってしまうので注意してください。
所有期間は、実家などの相続の場合は、相続したタイミングではなく元の持ち主(親や祖父母など)が所有を開始したときから計算します。
長期譲渡所得に対する税額の計算式は以下の通りです。
「譲渡所得金額×20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)」
さらに、所有期間が10年を超えている場合、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は長期譲渡所得の税率よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。これを「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」といいます
この特例が適用されると、
6,000万円以下の部分の税額の計算式は
「譲渡所得金額×14.21%(所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21%)」となります。
6,000万円を超えた部分については通常通り
「課税所得金額×20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)」で計算します
短期譲渡所得の場合は
「譲渡所得金額×39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)」
となり、約20~25%も税率が異なります。
譲渡所得税は、利益がなかった場合に加え、利益が3,000万円以内なら免除される特例があります。
これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。そのため、多くの場合、長期譲渡所得か短期譲渡所得かを考える必要はありませんが、大きな利益が上がりそうな場合には意識しておきたい制度となります。
参考
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(国税庁)
住宅ローンの減税措置は最大13年間
マンションを購入する際に組む住宅ローンは、購入者の金利負担を減らすため一定の基準を満たすことで所得税からの減税措置が最大13年間受けられます。
住宅ローンの減税とは、住宅ローンを利用してマンションや戸建てを購入した際、毎年の住宅ローン残高の0.7%を所得税から差し引ける軽減措置のことです。住宅ローン残高が3000万円だとすると、その年は21万円も所得税が安くなります。
2023年に控除期間が10年から最大13年へと変更になりました。住宅ローン減税は、新たにマンションを購入し、住宅ローンを利用した場合には再度適用可能です。
固定資産税の軽減措置は最大7年間
これは新築住宅を購入した場合に限る減税措置です。新築マンションを購入した場合、マンションなら5年間、戸建てなら3年間、建物部分へかかる固定資産税が半額になります。
耐震性や耐久性などに優れた「認定長期優良住宅」の場合は、固定資産税が半額になる期間がマンションなら7年、戸建てなら5年に延長されます。こちらも新たに新築マンションに買い替えたときは、再度適用可能です。
「フラット35 S」の金利引き下げ期間は最大10年
金融機関で住宅ローンのうち、借入から返済までの金利が固定されている「フラット35」では、耐震性やバリアフリー性などの観点で優れた住宅を取得した場合に、一定期間金利が引き下げられる特典が受けられます。引き下げ期間はプランにより異なり、5年もしくは10年となっています。
減税や特例 | 内容 |
譲渡所得税 | 所有期間5年以下だと税率が高く、5年を超えると低い。10年を超えるとさらに低く。 |
住宅ローン減税 | 最大13年間 |
固定資産税の軽減 | 最大7年間半額 |
フラット35Sの金利引き下げ | 最大10年間 |
所有期間によって受けられる特例や、支払う税金に変化があります。今回紹介した内容をもとに、買い替えタイミングを計画するという方法もあるでしょう。
マンション住み替えは「売り先行」で
今のマンションを売って、新しいマンションを購入する住み替えには、「先に今の自宅を売ってから新しい家を買う」という方法だけでなく、「先に新しい家を買ってから今の自宅を売る」という方法もあります。前者を「売り先行」、後者を「買い先行」といいます。
マンションの売却にあたっては、既存の住宅ローンの完済が必要です。
売却して得られる資金や、自己資金を充当すればローンが完済できるという状態でないならば、買い先行はおすすめできません。
住み替えをする際には、あらかじめ売り先行と買い先行の特徴や注意点を把握しておくようにしてください。
売り先行のメリット・デメリット
売り先行のメリットは、納得のいく金額での売却や、購入希望者の選定のためにじっくりと時間をかけられる点です。
今の生活を保ったまま売却活動ができるので、新たな金銭的負担が発生しない点も特徴です。
デメリットとしては、良い物件が見つかってもすぐに購入に移せず、買い逃してしまう可能性が高くなることが挙げられます。
買い先行のメリット・デメリット
買い先行は、自分が欲しい物件を自分のタイミングで購入できるため、買い逃しがない点が最大のメリットになります。
新しく購入した家に引っ越せば、古い家は空き家にできるので、内覧や引き渡しがスムーズに行えます。しかし、古い家が売れるまでは、既存の住宅ローンに加えて、新しい家のための住宅ローンの返済も必要な二重ローンの状態になり、金銭的負担が大きくなる点が大きなデメリットです。
住み替えローンは負担が大きいので要注意
住み替えローンとは、古い家の住宅ローンを、売却して得たお金や貯蓄を充当しても完済できない場合に、その不足分と新居の住宅ローンをまとめてローン組むものです。
住み替えローンは、新居の住宅ローンを組む金融機関で申し込みます。どうしても今の家を売却しなければならない場合には便利なローンですが、借り入れる総額が大きくなることから返済が厳しくなります。
また、住み替え時の年齢によっては、返済期間も短くなってしまい、月々の負担額が大きくなりがちなため、基本的にはおすすめできません。
優先すべきは「住み替える理由」
所有期間や築年数で、良い住み替えのタイミングの計画は立てられます。自身の都合で住み替えを行えるのなら、条件の良いタイミングでの住み替えがおすすめです。しかし、転勤や親の介護など、やむを得ない状況での住み替えが必要な場合も多いでしょう。
住み替えなければならない理由があるのなら、お得かどうかだけを重視するわけにもいきません。今回紹介した内容が、ご自身にとってベストな住み替えタイミングを決める際のお役に立てば幸いです。