マンションの住み替えは、旧居の売却と新居の購入を同時に行うため、準備やプロセスが複雑になりやすいです。そのため、「ぼんやりと住み替えを検討しているけど、何から手を付けたらよいか分からない」という方も多いでしょう。
そこで本記事では、株式会社すむたすでお客様のマンション売買をサポートされている、中村さんにインタビューを行い、プロの観点から「住み替えの準備の仕方」「不動産会社の選び方」「新居選びで気を付けるべき点」などについて解説します。
現在住み替えを検討されている方は、是非最後までご覧ください!
住み替えの準備は資金計画から
すむたすマガジン編集部によるインタビューの様子
—住み替えの準備をする際に、まず最初にすべきことについて教えてください。
中村 まずは資金計画をしっかりと立てることが重要です。住み替えを希望される方の多くが、「こういう物件に住みたい!」という物件ありきで計画を立て始めることが多いのですが、「実際にその物件を購入できるのか?」という資金面の検討がおざなりになっていることが少なくありません。
住み替えを堅実に進めるためには、物件を選ぶよりも、資金計画を固めることが先決です。現在借りているローンの残債額、物件の売却予想金額、世帯年収などを踏まえ、「どのくらい価格の物件なら買えるのか」を明確にしましょう。また購入後の、月々のローン返済や管理費、修繕費など支払いもどのくらい許容できるかイメージしましょう。
—資金計画を立てるために、具体的にすべきことはなんですか?
まずは、銀行や不動産会社が提供しているシミュレーションサービスを使用することがおすすめです。このようなサービスを利用することで、ローンの借り入れ可能金額や、購入後の月々の支払いがぐっとイメージしやすくなります。
シミュレーションが済んだ後は、住宅ローンの事前審査を受けてみましょう。事前審査は、物件の購入が決まっていなくても受けることができ、ローンの借り入れ可能額をある程度確定させることができます。そのため、より現実的な資金計画が立てられるようになるほか、後々お目当ての物件が見つかった時の購入手続きが円滑になります。人気のある物件は早いもの勝ちになることも多いので、事前審査を済ませておけば、他の購入希望者に差をつけることができるでしょう。
査定は中立性の高いサービスを利用する
—資金計画を立てるには、「今住んでいる物件がいくらで売れるか」を事前に把握する必要があると思いますが、どのような方法がおすすめですか?
そうですね、資金計画を立てるには、現実的な売却価格を事前に把握することが大切です。
最近では、一括査定サービスが普及していますが、一括査定では複数の業者間で競争が発生するので、実際に売れる金額よりも1割~2割ほど割り増しされた価格を提示されることが多いんです。また、査定後は営業目的の電話が大量にかかってくるので、冷静な判断が難しくなってしまいます。
正確な価格を知るためには、「すむたす」のような中立性の高い査定サービスを受けることをおすすめします。
他の方法としては、自分で気になった不動産会社を3社くらいピックアップして、個別に査定を申し込むのも良いでしょう。例えば、自分の知り合いが働いていたり、Googleや口コミの評価が高いなど、信頼感が持てる不動産会社に査定を依頼し、結果を比較してみましょう。こうすることで、「大体これくらいで売れそう」という相場観を把握できるかと思います。
不動産会社は担当者で選ぶ
—査定を受けた後は、契約する不動産会社を選ぶことになりますが、どのような基準で選べばよいのでしょうか?
不動産会社を選ぶときは会社の特徴や知名度よりも、「担当者で選ぶ」という意識を持ちましょう。実際の売却活動や新居探しなどあらゆる業務は担当者に一任されるので、住み替えの成否は担当者の能力に大きく左右されます。そのため、優秀で自分に寄り添ってくれる担当者を見つけることが重要です。
—優秀な担当者を見極めるためには、どうしたらよいのでしょうか?
これは非常に難しいのですが、一つの効果的な方法としては、「自分の物件のネガティブな要素について聞いてみる」というものが挙げられます。
例えば、「日中の日当たりが悪いこと」を物件のネガティブな要素として聞いてみるとしましょう。優秀な担当者であれば、そのようなネガティブな要素を事実として受け止めつつ、それを補填するようなポジティブな要素(間取りが住みやすい、高さがあって眺望がいい、西日が綺麗に見えるなど)を挙げ、売却する際のセールスポイントを一緒に考えてくれるはずです。
このように、あえてネガティブな要素を担当者に聞くことで、物件への理解の深さや、売主に寄り添うことができるのかを測ることができます。
直接買取できる不動産会社がおすすめ
—担当者以外にも、不動産会社を選ぶ基準があれば教えてください。
住み替えにおいて売却と購入のスケジュールを揃えたい方は、自社買取のある不動産会社がおすすめです。
住み替えにおいて最も重要かつ難易度が高いのが、スケジュールの調整です。新居の購入と旧居の売却の日程を完璧に揃えられるのがベストですが、仲介による個人への売却を希望する場合は、買主がいつ現れるか分かりませんし、買主が決まったあとも買主側にスケジュールを合わせる必要があります。そのため、仲介の場合はスケジュール調整に失敗するリスクが高いのです。
その点、自社で物件の買取を行っている不動産会社であれば、仲介での売却が難航した場合は、そのまま物件を買い取ってもらうことができます。この場合、物件の引き渡し日は売主が自由に決められるので、新居の入居日とぴったり揃えることができます。つまり、自社買取という選択肢がある不動産会社であれば、スケジュール面のリスクを抑えつつ、安心感を持って売却に望むことができるのです。
売却と購入は同じ会社に依頼する
—ちなみに、売却と購入は一つの不動産会社にまとめるべきなのでしょうか?
スムーズな取引をしたいのであれば、売却と購入は同一の不動産会社に依頼することをおすすめします。
別々の不動産会社に依頼することもできますが、窓口が二つに分かれるのでコミュニケーションが煩雑になりやすく、スケジュール調整にも支障がでる可能性もあります。
また、不動産会社によっては、売却と購入を同時に依頼することで仲介手数料の割引を受けられる場合もあります。
住み替えの進め方は担当者とじっくり検討する
—不動産会社を選んだ後は、具体的な住み替えの方法を決めることになると思いますが、どのように選べばよいのでしょうか?
住み替えには「同時進行」「売り先行」買い先行」という3つの選択肢があります。
特徴 | メリット | デメリット | |
同時進行 | 売却と購入を同じタイミングで行う | 手間を抑えたスムーズな住み替えできる | 買取で売却する場合は、売却価格が低くなる |
売り先行 | 先に旧居を売却し、後から新居を購入する | 高額売却を狙える | 一時的に仮住まいに引っ越す必要がある |
買い先行 | 新居の購入と引っ越しをしてから、旧居を売却する | 新居選びにこだわることができる | ある程度の経済的な余裕が必須である |
どの方法を選ぶかは、やはりご本人の要望次第になります。「自分は住み替えにおいて何かを重視したいのか」という優先順位を明確にした上で、不動産会社の担当者とじっくり相談しながら決めるのが良いかと思います。
参考までに、私のこれまでの経験では「同時進行」を選ばれる方が多いという印象があります。売り先行は、仮住まいの手間や費用が発生しますし、買い先行は経済的な余裕がないと難しいという制約があります。その点、同時進行であれば、手間や費用を最小限に抑えながら、スムーズな住み替えができるので、バランスの取れた選択肢だと思います。
繰り返しますが、最終的にはご本人の要望次第なので、各選択肢のメリットとデメリットを十分に考慮した上で、納得のいく判断をして頂きたいです。
新居選びは「管理状態」に要注意
—最後に、新居選びで押さえておくべきポイントについて教えてください。
物件のスペックや立地に関しては、人によって好みが分かれるので、私からはなんとも言い難いところです。
ただし、中古マンションを購入される場合は、必ず管理状態を確認することが重要です。
管理状態は、マンションの住み心地を左右しますし、資産としての価値にも直結する要素です。特に築年数が古いマンションは、適切なメンテナンスをしなければ、建物の老朽化が一気に進んでしまう可能性もあります。長く住むにせよ、将来的に売却するにせよ、管理状態が良いに越したことはありません。
—マンションの管理状態は、どのような観点から評価すればよいのでしょうか?
まずは、「修繕積立金が健全に積み立てられているのか」「滞納者がどれくらいいるのか」を確認するようにしましょう。これらの要素は、不動産会社が作成する「重要事項調査報告書」という書類に記載されているので、必ず目を通すようにしましょう。
また、物件を内覧する際には、メールボックスにチラシが溜まっていないか、ごみ置き場や植え込みなどの設備がきちんと整備されているか確認することで、管理状態の良し悪しを判断できます。
まとめ
本記事では不動産売買のプロへのインタビューをもとに、マンションの住み替えを成功させるためのポイントについて解説しました。
記事の内容をまとめると、以下の7つのポイントを抑えることが、住み替えにおいて重要だといえるでしょう。
- 住み替えは現実的な資金計画を立てるところから始める。
- 物件の売却価格を知るには、信頼できる会社に個別で査定を依頼する。
- 不動産会社は担当者の実力で選ぼう。
- 直接買取を行っている不動産会社なら、スケジュール調整が簡単になる。
- 売却と購入は同じ不動産会社に依頼すると、取引がスムーズになる。
- 住み替えの進め方は、担当者とじっくり検討しよう。
- 新居選びは管理状態を見る