不動産売買を代理人に委任する方法とは?必要事項や注意点まとめ

不動産売買の委任状を作成する方法と注意点 マンション売却

【この記事で分かること】

  • どのような場合に代理人が必要なのか
  • 委任状を正確に作成するポイント
  • 代理人を立てる際の注意点
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「委任状」とは何か

委任状とは、本人の意思に基づき代理人に対し、代理権の付与がなされていることを証明するための書類であり、本来であれば自身で行う手続きを他人に代行してもらう際に必要な書類です。

代理権を有する代理人による手続きは本人の意思に基づくとされ、所有者と同等な効果が発生します。

不動産売買で代理人を立てるケース

不動産売買は、原則売主と買主のどちらも本人が立ち会うことが必要です。しかし、場合によっては、売主や買主本人が立ち会えないケースもあります。そんなときは、代理人を立てて手続きを進めることが可能です。その場合に委任状が必要になります。

不動産売買では、主に以下の4ケースで代理人を立てて手続きを進める場合が見受けられます。

【不動産売買で代理人を立てるケース】

  • 取引対象の不動産が遠方にある場合
  • 契約に時間を割けない場合
  • 契約手続きに不安がある場合
  • 共有持分の不動産を売却する場合

取引対象の不動産が遠方にある場合

所有者が海外に住んでいたり、取引を行う不動産が遠方にあったりする場合、委任状に基づく代理人が手続きを進めることがあります。海外赴任中の方や、高齢で移動するのが厳しい方が売買の当事者あるような場合に、一方が代理人を立てて取引をするケースが見受けられます。

契約に時間を割けない場合

不動産売買は何かと時間を要します。売却する場合には査定に始まり、打ち合わせ、各種手続き、内覧対応など、時間や労力がかかります。しかし、中にはどうしても仕事の都合で時間が割けなかったり、入院や療養などの関係で時間が作れなかったりする方もいます。このような場合には、自分の代わりに取引を行なってくれる代理人を選定し、手続きを委任します。

契約手続きに不安がある場合

不動産売買の契約手続きは、売主にとっても買主にとっても複雑です。もちろん、一般的には売主も買主も自らで手続きを行います。しかし、契約手続きがどうしても不安な方もいるでしょう。そのような場合に、不動産売買に詳しい親族や専門知識のある弁護士や司法書士などを代理人に選定し、委任状を用いて代わりに手続きを行なってもらうことが可能です。

共有持分の不動産を売却する場合

不動産売買は、通常の売却ですら複雑です。しかし、遺産相続などでひとつの不動産を複数人で共有持分にしている場合には、さらに手続きが複雑になってしまいます。契約手続きの際はもちろん、決済、引き渡しにも持分を所有している全員の立ち合いが必要です。しかし、遠方に住んでいるなどで、全員が集まるのは難しいこともあるでしょう。

そんなときは、集まれない人の代わりに代理人を選定して、不動産売買の手続きを進めます。代理人を立てることで、スムーズなスケジュール調整が実現できるでしょう。

また、夫婦で取得した不動産を離婚時に売却する場合も同様です。代理人を立てることで、元配偶者と顔を合わせることなく、売却手続きを進めることができます。

代理権委任状とは

何らかの理由があって不動産売買を代理人に委任する場合には、「代理権委任状」が必要です。委任状を作成することで、代理人は委任者と同等の効力を持って不動産売買の手続きができるようになるのです。委任状に基づく代理人以外が本人を代理して、不動産売買の手続きを行うことは原則として認められません。

また、代理人には「任意代理人」「法定代理人」の2種類があります。

任意代理人とは、何らかの事情により所有者本人が契約の手続きを進めることができない状態の場合に、委任状を用いて代理人を立てる方法です。一方法定代理人とは、不動産の所有者が未成年や成年被後見人である場合の、法律の規定に基づく代理人です。

委任状で不動産売買ができないケース

以下のケースに妥当する場合、委任状に基づく代理人をもってしても不動産売買をすることはできません。

売主が成年被後見人の場合

売主が精神や健康上の理由から正しい判断をする能力を満たしていないと家庭裁判所から後見開始審判を受けた成年被後見人の場合、委任状をもってしても代理人を立てることはできません。
成年被後見人とは具体的に認知症や事故や病気の後遺症のある人が当てはまります。

成年被後見人は本人が正しい判断をする能力がありません。そのため、他人に代理権を与えられないのです。

成年被後見人には後見人として成年後見人が選任されます。本人の財産管理などは成年後見人が行います。

そのため、代理人として最初から成年後見人が手続きを行うことになるのです。

破産手続が開始された個人や法人が有する物件の場合

破産手続きが開始された個人や法人が有する不動産は、裁判所が選任する破産管財人により、その売却が進められます。そのため、任意で選任した代理人により売却を進めることはできません。

委任状に記載するべき内容

代理人を立てるための委任状には、法的に決められたフォーマットはありません。しかし、安全に不動産売買の手続きを進めるためには、どのような権限を代理人に委任しておくべきなのか知っておくことが必要です。

委任状には、どのような権限を代理人に委任するのかを明確にするために、以下のような内容を明記しましょう。

【委任状に記載するべき内容】

  • 土地について(所在地、地番、地目、地積など)
  • 建物について(所在地、家屋番号、種類、構造、床面積など)
  • 委任の範囲について(媒介委託、不動産売買契約の締結、手付金や売買代金の受領、引渡しなど)
  • 委任者(代理人)の住所・氏名
  • 委任者(所有者本人)の住所・氏名
  • 委任者(所有者本人)の署名・捺印(実印)
  • 書面日付
  • 委任状の有効期限(数ヶ月から半年が一般的)
  • 違約金の額

特に委任の範囲については、所有者本人と代理人でよく相談をしてから委任状への記載をしましょう。

委任状の記入例【ひな形つき】

委任者〇〇は△△を代理人とし、以下の条件で下記に記載された不動産(土地・建物)の売買契約を結ぶ権限を委任します。

1.売買物件の表示項目

(土地)

所在:〇〇都〇〇区〇〇町

地番:〇〇番〇〇

地目:宅地

地積:〇〇平米

(建物)

所在:〇〇都〇〇区〇〇町

種類:居宅

構造:木造2階建

床面積:1階〇〇平米、2階〇〇平米 

2.売却条件

1. 売却価額:金〇〇円

2. 手付金の額:売却価格の〇〇%

3. 引渡予定日:令和〇年〇月〇〇日

4. 違約金の額:売買価額の〇〇%相当額以上で、本人(売主)と代理人でその都度協議をしてから決定する

5. 公租公課の分担起算日:不動産を引き渡し日 *〇〇年1月1日など

6. 金銭の取扱い:※本人(売主)と代理人で取り決めた内容を記載

7. 所有権移転登記申請手続等:※金銭を受領すると同時に買主への所有権移転登記を実行するなどの詳細を記載

8. その他の条件:売却条件に記載されていない事項、上記に記載された売却条件の内容に変更があるときは、本人(売主)と代理人でその都度協議してから決定する

3.本委任状の有効期限 委任状作成から〇〇ヵ月(令和〇〇年〇〇月〇〇日 まで)

以上

令和〇年〇月〇〇日

委任者

住所 〇〇都〇〇区〇〇町

氏名 〇〇 〇〇(自署・実印)

受任者(代理人)

住所 〇〇県〇〇市〇〇町

氏名 〇〇 〇〇(自署・実印)             

その他の必要書類

代理人に不動産売買を進めてもらうためには、委任状のほかにどのような書類が必要になるのでしょうか。委任者と代理人が用意すべき主な書類をチェックしておきましょう。

【委任者(所有者本人)が用意する書類】

  • 印鑑証明書(3ヵ月以内のもの)
  • 実印
  • 住民票(3ヵ月以内のもの)
  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなどの写真付き身分証明書)

【代理人が用意する書類】

  • 印鑑証明書(3ヵ月以内のもの)
  • 実印
  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなどの写真付き身分証明書)

委任状のチェックポイント

代理人経由で不動産売買を行うための委任状は、所有者本人である委任者の意向を確認して、不動産会社が作成します。そのため委任状に署名捺印をする際に、必ずどのような内容が記載されているのかを確認し、記載内容に意向との相違がないかを確認しましょう。

よく確認をすることなく署名捺印をしてしまうと、不動産契約の締結後に誤りを見つけても、取り消すことができません。

委任状は、代理人に自分の権限を付与する重要な書類です。確認の際には詳細までしっかりとチェックしてください。主なチェックポイントは以下の4つです。

【委任状のチェックポイント】

  • 対象となる不動産が正しく表記されているか
  • 委任する権限に相違がないか
  • 文末には「以上」と記載されているか
  • 白紙委任をしていないか
  • 「一切の件」という表現を使っていないか
  • 捨印を使用していないか

それぞれのポイントについて解説していきます。

登記事項証明書や登記済権利証について

対象となる不動産が正しく表記されているかは必ず確認をしましょう。登記事項証明書や登録済権利書などと突合し、委任状に記載されている不動産に相違がないか、きちんと確認してください。

委任する内容に相違がないか

委任状では、不動産売買において代理人がどこまでの権限を有しているのかを記載します。
誰がどう見ても同じように内容が解釈できるか、曖昧な表現が含まれていないかを詳細に確認しましょう。

委任状では、不動産売買に置いて代理人がどこまでの権限を持っているのかを記載します。誰がどう見ても同じように内容が理解できるか、曖昧な表現が含まれていないかを詳細に確認しましょう。

なお、代理人に依頼する権限をより限定的に記載するのもポイントです。

代理人に何を行ってほしくて、何はしてほしくないのかを明記することで後から認知期の違いによるトラブルが避けられます。

文末には「以上」と記載されているか

委任状の書き換えを防止するために、最後に「以上」の文字があるか確認しましょう。「大したことではない」と感じるかもしれませんが、「以上」の文字がないと後々トラブルに発展することもあります。

白紙委任をしていないか

項目が空白になっている委任状を「白紙委任状」といいます。

白紙委任状は、代理人への委任範囲を定めていないため、トラブルにつながりやすいです。すべての欄がきちんと埋まっているか、きちんと確認しましょう。

「一切の件」という表現を使っていないか

委任状により代理人に代行してもらう手続きは、手続き全体の一部にすぎません。そのため、「一切の件」という表現を使っていないかを確認しましょう。

例えば、「この不動産売却において一切の件を任せる」としてしまうと、代理人が全権限を持ってしまうことになります。そうすると、自分の意思に反する手続きが進められてしまうリスクがあります。

捨印を使用していないか

委任状に自身の捺印がないかをチェックしておきましょう。

余白部分に印鑑を押しておくと、それをいざ訂正が必要になった際に訂正印として利用できます。代理人であってもこの捺印を訂正印として利用できてしまいます。

そのため、意思に反する訂正を勝手にされてしまうことがないよう、捨印がないかは十分に確認するようにしましょう。

不動産売買を委任する場合の注意点

代理人を立てて不動産売買を行う場合、以下の2点に注意が必要です。

【不動産売買を委任する場合の注意点】

  • 信頼のおける人物を選ぶ
  • 代理人との連絡手段を確保しておく
  • 本人確認を受ける
  • 仲介の不動産と面会をしておく

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

信頼のおける人物を選ぶ

不動産売買では大きな金額が取引されます。また、委任状を持っている代理人が行った行為は、所有者本人である法的委任者が行なったものと同じ効力を有します

後から「契約行為をしたのは自分ではない」と、代理人の契約行為を取り消すことはできません。そのため、代理人を決めるには十分な注意が必要です。

法的には特に代理人を選任する条件や基準は設けられていません。委任者の希望する相手であれば、誰でも代理人になり得ます。

だだ、一般的に代理人に選任されるのは、親族または専門知識を持っている弁護士や司法書士です。

代理人との連絡手段を確保しておく

代理人といっても、すべての契約行為を自由に行えるわけではありません。委任者に代わって代理人が手続きを行えるのは、委任状に記載のある内容、権限範囲においてのみです。

委任状に記載のある内容や権限を超える範囲の決定事項がある場合には、都度委任者に確認を取りながら手続きを進める必要があります。そのため、委任者は代理人とすぐに連絡がつくようにしておくようにしましょう。

本人確認を受ける

なりすましを防止するためにも、本人確認を必ず受けるようにしましょう。本人確認の方法は、以下です。

・運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書の提示

・提示された身分証明書の内容が、取引相手本人と一致しているかを確認

不動産仲介会社と面会をしておく

提示された身分証明証が本人であることを確認できるよう、事前に不動産仲介会社と面会しておくのが効果的です。

不動産売買は大きな金額が動く取引です。双方面識があったほうが、安心して手続きを進められるでしょう。

代理人を利用した不動産売却をスムーズに進める方法

ここまで解説してきたように、代理人を利用した不動産売却には、様々な手続きや注意事項があります。委任者の利益を守るためにも、専門家に相談しながら進めていくのがオススメです。

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