不動産投資について情報を集めている人であれば「オーナーチェンジ物件」という言葉を目にしたことがあるでしょう。
入居者がいる状態で売買される不動産のことをオーナーチェンジ物件といいます。収益が出る状態で購入できるオーナーチェンジ物件にはメリットが多く、不動産投資を始めるにあたってはスタンダードな方法となっています。
しかし、オーナーチェンジ物件を購入する際には、注意して確認すべき点もいくつかあります。
この記事では、オーナーチェンジ物件の概要から、購入するメリット、購入時の注意点まで網羅的に解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
オーナーチェンジ物件とは?
オーナーチェンジ物件とは、現在の入居者との賃貸借契約はそのままに、物件のオーナーが変更になった物件のことをいいます。オーナーチェンジ物件を売買する際は、物件だけでなく、入居者との契約ごと引き継ぐことになります。また、基本的には入居者が支払っている敷金も引き継ぎます。
入居者がいる状態で売買されるため、買い手側には、購入した瞬間から家賃収入が発生する点にメリットがあります。
オーナーチェンジ物件の売却理由8つ
賃貸物件は入居者がいないと収益が発生しません。そのため、不動産投資を始める上では、既に収益が発生しているオーナーチェンジ物件を購入することには大きなメリットがあります。
しかし、きちんと収益が上がっている物件であれば、なぜ現オーナーは手放すのでしょうか。その理由次第では、購入前にしっかりと検討をし直す必要があります。
オーナーチェンジ物件が売却される主な理由について確認していきましょう。
8つの理由のうち、後半の4つは購入後に費用や手間などの点で予定が狂う可能性があり、購入時にはしっかりと見極めたいものになります。
1.他の収益物件に買い替える
不動産投資にはリスクもありますので、スモールスタートが基本です。現在所有している物件を売却し、それを元手により世帯数や見込み収益の大きな物件に買い替えるということは一般的に行われています。
2.遠方への引っ越しのため管理が難しくなった
本業での転勤などを理由に、所有物件から遠方に引っ越すことになると、管理が難しくなります。管理会社に委託をすることもできますが、費用がかかります。
また、オーナーとしては自身の目で物件や周辺の現況を確認することも重要になるので、自身の目が行き届かない状態になるのを避けるために売却をするという方はいます。
3.ローンを完済したい・手元にお金が必要
物件を購入する際にはローンを組んでいますので、売却して得た価格で現在のローンを完済したい、という場合もあります。
また、副業で不動産投資をしている際は、病気やケガなどで本業が続けられなくなるとローンの返済が厳しくなることがあります。家賃収入だけでローンの返済や生活費がまかなえない場合、収益がある物件でもやむを得ず売却をすることがあります。
4.なるべく高値で売るため
入居者がいない物件よりは、入居者がいる物件の方が買主は見つかりやすく、また、物件の価値も高くなります。なるべく高く売るために、あえて満室に近い状態で売却をし、大きな売却益を獲得しようとする投資家もいます。
5.大規模修繕の時期が近い
アパートやマンション1棟のすべてのオーナーである場合、物件の老朽化による壁や給排水設備、電気設備などの劣化を修復するために、大規模な修繕が必要になります。
規模が大きな修繕になればなるほど費用が大きくかかりますので、大規模修繕の前に売却をしたいと考えるオーナーもいます。
6.将来的な空室リスクへの備え
賃貸借契約の期限を迎える入居者が多い、競合物件の増加、近隣の大学の移転など、今後、空室リスクが高まる可能性がある場合、早めのリスクヘッジとして売却を検討するオーナーもいます。
7.入居者や近隣とのトラブル
オーナー起因による入居者とのトラブルや、入居者の家賃滞納、騒音、マナー違反などが原因で物件を手放そうとするオーナーもいます。トラブルには入居者が原因であるものだけでなく、オーナーの対応に不備があってトラブルに発展している場合もあります。
家賃滞納などの入居者起因のトラブルは、物件を引き継いだあとも発生する可能性がありますし、オーナー起因のトラブルが起こっていたならば、入居者からの信頼を回復する手立てを検討する必要もあるでしょう。
8.経営が成り立っていない
オーナーの収支計画が甘く、入居者がいても経営が成り立っていなかったり、利回りが悪かったりするケースがあります。また、予定以上に維持費や修繕費がかかってしまっているケースもあります。
このような物件の場合は、購入しても改善できない可能性が高く、赤字になりかねないので注意が必要です。
現オーナーが、オーナーチェンジ物件として売り出す際、買主に対してすべての売却理由をそのまま話してくれるとは限りません。オーナーの話だけでなく自分で物件を訪れて実際の管理状態や周辺の調査を行うなどをして、リスクヘッジをすることが重要です。
オーナーチェンジ物件を購入する4つのメリット
オーナーチェンジ物件を購入することには、以下のようなメリットが挙げられます。
1.収支計画が立てやすく、初心者向き
オーナーチェンジ物件は既に入居者がいる状態で引き継ぐので、家賃収入がどれくらい入ってくるかの計算ができます。
そのため、管理や修繕といった、物件の維持にかかる費用と収入のバランスを鑑みた現実に即した計画が立てられます。
2.自己資金の投入が少なくて済む
不動産投資における収益としては、家賃収入と売却による利益の2つがあります。オーナーチェンジ物件を購入するということは、基本的に家賃収入の獲得を目指すことになるでしょう。
家賃収入は入居者がいなければ発生しません。入居者が決まるまでも管理費などの物件維持にかかる経費は発生しますので、その場合は自己資金を投入することになります。
しかし、オーナーチェンジ物件は家賃収入が発生している状態から始められるため、購入後の自己資金投入を少なく抑えられます。
3.入居者募集の手間がない
入居者との契約ごと引き継ぐオーナーチェンジ物件は、入居者募集の手間がかからないか、少なくてすみます。
入居者の募集には広告宣伝費がかかりますし、入居が決まったときには不動産会社への仲介手数料の支払いが発生します。
入居者がいない部屋の状態によっては、大規模なリフォームが必要になることもあり、費用や時間もかかることがあります。
4.既に収益があるので不動産ローンの審査に通りやすい
マイホームを購入する際と同様に、投資用のアパートやマンションを購入する際には、金融機関で不動産ローンを組むのが一般的です。
不動産ローンは、本人の属性だけでなく、購入しようとしている物件の収益性や資産価値も審査の対象になるため、審査が厳しくなりがちです。
金融機関側は、「きちんと滞りなく返済ができるか」を審査しています。入居者がいて、既に収益が上がっている物件であるならば、収益性があると判断されやすく、審査にも通りやすくなります。
オーナーチェンジ物件のデメリットと注意点4つ
続いて、デメリットと注意点について確認していきます。
1.部屋の状態を確認できない
すでに入居者がいる部屋は、たとえオーナーであっても部屋の状態を確認できません。破損や汚損があっても、確認できるのは入居者が退去したときになります。
もちろん、退去時には管理会社などが立ち会って確認しますが、想像以上に破損がひどければ、リフォーム期間を設けないとならない、などのトラブルにつながります。
2.どのような人が住んでいるか把握しづらい
入居者の中には家賃を滞納しがちな人や、過去に他の入居者とトラブルになったことがある人が住んでいる可能性もあります。
入居者についてのこれまでの情報は、基本的には現オーナーや管理会社経由でしか、得ることが困難です。いわば自身で入居者を選べない点はオーナーチェンジ物件のデメリットだといえます。
3.入居者がサクラである可能性がある
現オーナーが収益性の高い物件であると見せかけるため、サクラを雇って物件に入居させている悪質なケースがあります。この場合、購入が決まるとサクラはすぐに退去し、空室の部屋ばかりになる可能性があります。
賃貸契約の期間が2年や3年と決まっていても、それより早く入居者が出ていくことは止められません。サクラでないかどうかを見極めるために、繁忙期でもないのに急に入居者が増えた時期がないか、などを確認することをおすすめします。
4.敷金が引き継げない場合がある
入居者から預かっている敷金は、使用上の問題がなければ入居者が退去するタイミングに合わせて返還するものです。しかし、オーナーチェンジ物件の売却価格に敷金の返還義務が含まれていたり、売買契約上で敷金を引き継がない旨の記載があったりすれば、新オーナーの資金から敷金を返還する必要があります。
敷金が引き継げない場合は、それをふまえて価格交渉をすれば問題ありません。敷金引継ぎができるかどうか、購入前に確認するようにしましょう。
オーナーチェンジ物件を購入する際のチェックポイント4つ
デメリットや注意点をふまえて、オーナーチェンジ物件を購入する前にチェックしておきたいことを4つ紹介します。
1.外観・周辺環境
入居者がいる部屋には入ることはできなくても、物件の外観や周辺の環境は実際に足を運んで確認することをおすすめします。
ゴミ置き場や廊下などの共用部分の管理状況を見れば、どんな人が入居しているかのイメージがつかめることがあります。また、駅から建物までの様子や周辺施設などを確認し、現在の入居者が退去したあとも入居希望者が継続して現れそうかどうかを見てみるとよいでしょう。
2.過去の運営状況・修繕履歴
現在の入居者がいつから入居しているのか、これまで修繕した履歴はあるかを確認します。
長年にわたって入居している人ならサクラではないことが分かりますし、修繕履歴は次に行うべき修繕の規模や内容、時期などの計画を立てる際の材料になります。
3.管理会社の管理状況
仲介ではなく、物件を管理する役割として管理会社がついている場合には、その対応状況も確認する必要があります。
たとえば、共用部の電灯が切れたままであったり、ゴミ置き場にゴミが散乱していたりするなど、定期的な巡回をしていれば気づけることへの対応がなされていない場合には、管理が十分行きわたっていないと考えられます。
4.現在の賃貸借契約の内容
入居者がいる状態で引き継ぐオーナーチェンジ物件では、現オーナーと入居者の間で取り交わされている賃貸借契約も引き継ぐことになり、その内容を入居者の同意なく変更することはできません。
そのため、現時点でどのような契約内容になっているのかを把握することは、その後の運営においても重要になります。
具体的には、特にトラブルにつながりやすい以下の点をチェックするようにしましょう。
・賃料
・契約期間
・管理費の有無
・敷金と礼金の有無
・更新料の有無
・保証人や家賃保証会社
・退去時の原状回復費用の負担の取り決め
部屋別の家賃・敷金などの賃貸借契約の状況(レントロール)
賃貸借契約の内容や状況はすべての部屋で同じとは限りません。部屋別に家賃・敷金などの賃貸借契約の状況を表にまとめた「レントロール」は必ず確認するようにしましょう。
レントロールは、部屋ごとの契約状況を確認するためだけでなく、近隣にある似たスペックの物件との比較にも使用できます。不自然に家賃が安い部屋や高い部屋があるなら、その理由を確認する必要があります。
オーナーチェンジ物件購入後に引き継ぐ権利と義務
オーナーチェンジ物件を購入し、自身がオーナーとなれば、建物の所有者としての権利と義務も引き継ぐことになります。物件オーナーとなる際の基本事項となりますので、把握しておきましょう。
引き継ぐ権利
物件オーナー、貸主としての権利には主に以下の3つがあります。こちらはオーナーとしての利益を守る内容となっています。
・入居者に賃貸料を支払ってもらう権利(民法第601条)
・契約終了時の建物を返還してもらう権利(民法第601条)
・契約終了時に入居者に原状回復してもらう権利(民法第621条)
引き継ぐ義務
物件のオーナーとして部屋を貸す際には、主に以下のような3つの義務も発生します。義務は入居者が問題なく暮らしていけるようにオーナーが負うものとなっています。
・建物を入居者に使わせる義務(民法第601条)
・建物の修繕をする義務(民法第606条)
・入居者の退去時に敷金を返還する義務(民法第622条の2第1項)
参考:賃貸借契約に関するルール(法務省)
オーナーチェンジ物件はメリットと注意点を把握して購入しよう
すぐに家賃収入が発生するオーナーチェンジ物件の購入には、大きなメリットがあります。
しかし、既存入居者との契約も引き継ぐことになるからこそ発生するリスクもあります。また、現在の入居者も近い将来退去するタイミングが来るかもしれません。
オーナーチェンジ物件の購入には、現在の収益性だけでなく、将来的に継続して入居希望者が現れる物件かどうか、いわば賃貸住宅としての魅力があるかどうかも見極める必要があるでしょう。
この記事が、今後の不動産投資のお役に立てれば幸いです。