自宅の売却を検討し、売り出し始めてから1年以上の長い期間が経つのに買い手がつかないことがあります。
不動産には売れやすいものもあれば、なかなか売れにくいものもあります。
この記事では、不動産を売れやすくするためのポイントについて解説します。長期間売り出しても売れない原因や、それへの対応策も紹介していきます。ぜひご自身の状況に合わせて参考にしてください。
売り出してから買い手が見つかるまでの平均は2か月半
売り出してから1年以上経っても買い手がつかない場合、何らかの原因があることが予測できます。しかし、一般的な成約までの日数が分からなければ、「少し長い程度」なのか「明らかに長すぎる」のかは分かりません。
戸建てでもマンションでも、売り出す際には、レインズと呼ばれる売買サイトに登録して情報掲載することが義務づけられています。
レインズを運営する公益財団法人東日本不動産流通機構が発表した「首都圏不動産流通市場の動向」によると、レインズに登録してから成約に至るまでの日数は2022年度時点で中古マンションは約73日、中古戸建てで約79日となっています。
参考:首都圏不動産流通市場の動向(公益財団法人東日本不動産流通機構) より引用
つまり、多めに見積もっても売り出してから2か月半の間に買い手がつかなければ、売れ残りとなり、原因の究明や解決策の実施が必要になるといえるでしょう。
1年以上家が売れない理由は「家」「不動産会社」「自分」の大きく分けて3パターン
家が売れない理由は大きく分けて「家」「不動産会社」「自分(売主)」の3パターンに分けられます。
それぞれについて、説明していきますので、自身の物件がどのパターンに該当するかを確認してください。
家に売れない原因があるパターン
家に起因するものとしては以下の3つがあります。
1.築年数がかなり経っている
建物が古いこと自体は必ずしもマイナス要素ではありません。築年数に見合った価格にすれば、自由にDIYやリフォームがしたい人にとっては魅力があるものになります。
しかし、建物が古く、そのままでは住めない状態であれば、買い手の候補から外れることが多くなるでしょう。
2.立地が悪い
立地が良い人気のエリアであれば、買い手はつきやすいのですが、マンションであるのに郊外にあるなど立地が悪い場合には買い手がつきにくい傾向にあります。
3.価格が高い
不動産売却では適正価格で販売するのが基本です。
高く売ろうとするあまり、相場よりも高い価格設定にしていては、買い手は見つかりづらくなります。
不動産会社に原因があるパターン
不動産を売却するにあたっては不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。
しかし、不動産は良いのに、以下の2つのように、不動産会社が原因で買い手がつきにくくなっているパターンがあります。
1.不動産会社の営業力不足
不動産会社にも得意分野があれば不得意分野があります。たとえば、中古マンションを売るのが得意な不動産会社に中古戸建ての仲介を依頼しても、成功率は下がりがちです。
また、不動産会社と売主の相性もあります。最終的には売却できないと固定資産税や維持費などばかりがかかってしまい、手元にお金は入ってきませんので、不動産会社の得意分野や得意エリアなどは入念に確認する必要があるでしょう。
2.囲い込み営業の恐れ
不動産売却において、不動産会社は、買い手と売主を結び付けることで初めて仲介手数料という収入を得ます。
不動産会社は、売主からだけでなく、買い手からも仲介手数料を得ます。仲介を依頼されている不動産会社が自社で買い手も見つけることができれば、売主からの仲介手数料と買い手からの仲介手数料の両方を得られます。このことを両手取引といいます。
仲介を依頼された不動産会社は、買い手を見つけるために宣伝活動を行いますが、不動産はさまざまなサイトに掲載されるため、売主側の不動産会社と買い手側の不動産会社が同一のものであるとは限りません。
しかし、悪質な不動産会社では、両手取引を狙うために、他社経由で内覧希望があっても「商談中なので売却できません」などとして不動産の販売活動を故意に制限する「囲い込み」を行っている場合があります。
相場に見合った適正価格で、立地も悪くないのに内覧希望者がなかなか現れない、といった場合には囲い込みをされている恐れがあります。
自分に原因があるパターン
不動産や不動産会社に問題なくても、残念ながら自分に原因があって売買につながらない、というケースがあります。
具体的には内覧希望者への対応に問題ある以下のようなケースが挙げられます。
掃除が行き届いていない
内覧希望者は、実際に自分が住むことを想定してその不動産を訪問します。それにもかかわらず清潔感がなかったり、過ごしにくさを感じさせたりすると内覧希望者は購入希望者にはならないでしょう。
内覧希望者があるときには、しっかりとその都度掃除をすることを徹底するようにしましょう。
ニオイ対策を徹底していない
実際に過ごしていると気づきにくいものですが、家にはその家ごとに独特のニオイが多少なりともあるものです。
玄関や水回りといったニオイが発生しやすい場所の掃除やペットのにおいなどには特に気をつかうようにしてください。
部屋が薄暗い
部屋の明るさは、部屋の印象を左右します。たとえば、部屋が薄暗いというだけで「日当たりが悪い家だ」と思われてしまうかもしれません。昼であっても照明をつける、カーテンを開けて日差しが入ってくるようにするといった配慮は必要でしょう。
部屋の温度が適切でない
内覧希望者は売主にとっては顧客となりえる人たちです。相手をもてなすという意味でも夏は冷房を冬は暖房をつけて、過ごしやすい空間づくりに努めるようにしてください。
内覧希望はあるものの、購入希望にならないケースが多いというのは、家のスペックとしては問題がない可能性が高く、自分に問題があることが多いでしょう。
1年以上家が売れない家に買い手がつきやすくする対処法
ここからは長期間売れない家に、買い手がつけやすくするための具体的な方法を紹介していきます。
適正価格のチェック
不動産の売却では、相場に合わせた適正価格で売ることが重要です。売れていないからといった安易に値下げをするのではなく、まずは適性価格で売り出しているかをチェックしましょう。
売り出し価格は複数の不動産会社に査定してもらって設定することをおすすめします。また、自身で相場を知る方法として、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理している不動産流通標準情報システムの「レインズマーケットインフォメーション」を活用するのもおすすめです。
レインズマーケットインフォメーションでは、地域や沿線、駅からの距離、間取、土地面積、築年数などの条件をもとに、実際に売買が行われた物件の価格(成約価格)の検索ができます。
自身の不動産と似た条件で検索すれば、大体の相場が把握できます。査定価格ではなく、最終的な売却価格が分かる点は大きく参考にできるでしょう。
参考:レインズマーケットインフォメーション(不動産流通機構)
掲載する写真の見直し
売買サイトに掲載する写真は、良い物件を探している人にとって内覧するかどうかの大きな判断材料となります。写真の明るさや角度などにこだわり、最も魅力的に見えるような写真を掲載することが重要です。
ハウスクリーニングを依頼する
長年住み続けていた家なら、想像以上に傷みやニオイが蓄積していることがあります。内覧希望者がなかなか購入希望に発展しないということなら、一度ハウスクリーニングを依頼してみるのも方法の1つでしょう。
インスペクションを依頼する
インスペクションとは住宅の健康診断にあたるもので、建築士の資格をもつ専門の検査員が、客観的に、目視、動作確認、聞き取りなどを行って、住宅の現状の検査を行うことをいいます。
住宅の現状がプロの目で判定してもらえるので、引き渡し後のトラブルが予防できます。売主側には他物件と差別化ができ、買い手側はリフォームやメンテナンスの計画が立てやすくなるメリットがあります。
既存住宅売買瑕疵保険をつける
中古不動産の購入検討者は、シロアリや雨漏りなど内覧時には気づけない傷みが気になるものです。売主側が気づいていなくても、シロアリ被害などがあることが引き渡し後に発覚した場合、その責任は売主側に発生します。これを瑕疵担保責任といいます。
しかし、瑕疵担保責任が発生する期間は永久ではなく、新築の場合は10年間、中古物件の場合は売買契約書で個別に定められるもので、契約内容として瑕疵担保責任は免除されていることや、数か月の短い期間に設定されていることがほとんどです。
つまり、その期間後に発覚した欠陥については、たとえあらかじめ買い手に知らされていないものであっても、買い手側で修繕を行う必要があります。
そのような不利な状況を改善するための保険制度が「既存住宅瑕疵保険」で、先述したインスペクション(検査)に保証がセットとなったものになります。
保険に加入するためには、専門の建築士による検査に合格することが必要となるので、既存住宅瑕疵保険をつけることで、買い手は安心して購入することができるようになります。
参考:既存住宅売買瑕疵保険について(国土交通省)
不動産会社を変更する
自分と相性が悪い不動産会社や、囲い込みをしている恐れがある不動産会社など、違和感を覚えたら不動産会社を変更することも考慮するとよいでしょう。
おすすめできない対処法
家を売るために行う対処法としておすすめできないのは新たに大きな費用がかかってしまう、以下の2つの方法です。
大規模なリフォーム
買い手をつきやすくするためにリフォームをすることは1つの方法ではありますが、積極的におすすめできるものではありません。
なぜなら、リフォームをしても買い手がつくとは限りませんし、さらには買い手がついたとしても売却価格にリフォーム代を上乗せできるとも限らず、コストパフォーマンスが悪いからです。
空き家にして自分たちは一時的に賃貸物件に移り住む
内覧希望者からすると、人が住んでいる状態での内覧よりは、空き家の状態の方が家具の配置や部屋の使い方などのイメージがしやすいという場合もあるでしょう。
しかし、内覧希望者のために、自身が引っ越しをして売れるまで過ごすのも引っ越し費用や家賃が新たにかかるのでおすすめはできません。
まずは掃除などのできる範囲のことを徹底して行い、内覧希望者に良い印象を与えることに注力するようにしてください。
対策しても売れなかった家は最終手段「不動産買取」を検討しよう
さまざまな対策を実施して3か月経っても内覧希望者が増えないなど、状況が好転しない場合には、不動産買取を検討するとよいでしょう。
不動産買取とは、仲介で一般市場で売るのではなく不動産会社に直接物件と買い取ってもらう方法のことです。買い手を探す必要がないのでスピーディに現金化できる点に大きなメリットがあります。
一方でデメリットとしては、適性価格よりも安い売却価格になってしまうことが挙げられます。
しかし、そもそも買い手がつかなければ利益はゼロですので、買い手がつく見込みがないまま売り出し続けるよりは断然よいと考えることができます。
また、現状のままでは住めないような物件であっても買い取ってくれることが多く、買い手がつきづらい物件でも売却できる可能性が高い点は大きなメリットだといえます。
まとめ
売り出してから1年以上経っても売れない家には、さまざまな原因があります。
しかし、ほとんどの場合は費用をあまりかけることなくできる対処法があります。今回紹介した買い手を見つけるための対策が、現状の把握やこれからの対応のヒントになれば幸いです。