住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高の1%を、税額から控除できる制度です。中古マンションにも適用できますが、条件や計算方法は新築住宅とやや異なります。本記事では中古マンションで住宅ローン控除を受ける方法や手続き、その際に必要となる書類について解説します。住み替えをはじめとする、中古マンションだからこそ気をつけたいポイントも紹介します。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、個人がマイホームを買ったり増改築したりするために住宅ローンを組んだとき、一定の要件を満たすと適用できる控除のことです。住宅ローンの年末残高の合計額に基づき、その年以降の各年分の所得税が控除されます。
中古マンションでも適用できるほか、住宅ローンを利用しなくても、一定の改修工事には適用できることがあります。
なお、正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。
住宅ローン控除の適用条件
中古マンションの購入で住宅ローン控除を適用するには、次の条件を満たさなければなりません。
・取得日から6ヵ月以内に住みはじめた
・住宅ローンの返済期間が10年以上であること
・居住目的で住宅を取得(建てたり買ったり)した
・控除の適用を受ける各年の12月31日まで住んでいること
・住宅ローン控除を受ける年分の合計所得が3,000万円以下であること
・生計を一にする親族や、特別な関係のある人からの取得ではないこと
・建築されたからの期間や耐震基準などの条件のうち、いずれかを満たしている
・取得した住宅の床面積が50㎡以上、かつ床面積の2分の1以上が住居用であること
・一定の期間、長期譲渡所得の課税の特例など、ほかの措置を適用されていないこと
条件はほかにもありますが、中古マンションの購入で特に気をつけるべきなのはこれらでしょう。ほかの条件は、国税庁のWebページで確認できます。
No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除) │ 国税庁
これらの中でも次の3つは、住み替えの際に特に気をつけたいものです。
・取得日から6ヵ月以内に住みはじめた
・住宅ローン控除を受ける年分の合計所得が3,000万円以下であること
・一定の期間、長期譲渡所得の課税の特例など、ほかの措置を適用されていないこと
取得日から6ヵ月以内に住みはじめた
住み替えの際に気をつけたい1つ目の条件は、「取得日から6ヵ月以内に住みはじめた」です。中古マンションの購入日から6ヵ月以内に、その物件に住みはじめなければ、住宅ローン控除は受けられません。購入した中古マンションに入居する前に増改築等工事をする場合でも、6ヵ月以内の入居が必要です。
ただし、その工事が新型コロナウイルス感染症の影響により遅延した場合は、入居日が取得から6ヵ月以上経っていても控除を適用できることがあります。
住宅ローン控除を受ける年分の合計所得が3,000万円以下であること
住み替えの際に気をつけたい2つ目の条件は、「住宅ローン控除を受ける年分の合計所得が3,000万円以下であること」です。この合計所得には、不動産運用/売買や投資などによる所得も含みます。住み替え前の物件で売却益が出ていると、住宅ローン控除を適用できないこともあるでしょう。
売却益が出ていて、合計所得が3,000万円を超える場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」や「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を受けるといいかもしれません。
一定の期間、長期譲渡所得の課税の特例など、ほかの措置を適用されていないこと
住み替えの際に気をつけたい3つ目の条件は、「一定の期間、長期譲渡所得の課税の特例など、ほかの措置を適用されていないこと」です。住宅ローン控除は、基本的にほかの控除や特例と併用できません。どの控除・特例を受けるのが最も得なのか計算し、適用するものを決めましょう。
ほかの措置を適用されていない「一定の期間」は次の通りです。
譲渡(売却)した時期 | 「一定期間」 |
令和2年4月1日以降 | 購入した中古マンションに住みはじめた年と その前2年、後3年の計6年間 |
令和2年3月31日以前 | 購入した中古マンションに住みはじめた年と その前後2年ずつの計5年間 |
住み替えの際は住宅ローン控除とほかの特例・控除を比べ、どれを適用すると最も得になるのか計算しましょう。ほかの控除については、こちらの記事で詳しく解説しています。
住宅ローン控除の計算方法
住宅ローン控除では、控除を受ける年の年末時点での住宅ローン残高の1%を、所得税や住民税から控除します。控除を受けられる期間や細かな計算式は、購入した中古マンションに住みはじめた年月日により異なり、それぞれ次の通りです。
適用期間:10年間
計算式:年末残高×1%
【控除額の上限】
購入した中古マンションに消費税がかかっている場合:40万円
購入した中古マンションに消費税がかかっていない場合:20万円
適用期間:13年間
計算式:
1~10年目:年末残高×1%
11~13年目:次のいずれか少ない方を控除限度額とする
A.年末残高(上限4,000万円)×1%
B.(住宅取得等対価の額ー消費税額)〔上限4,000万円〕×2%/3
中古マンションで住宅ローン控除を受けるときの注意点
中古マンションで住宅ローン控除を受けるときは、次のポイントに気をつけましょう。
・建築されてから期間や耐震基準をチェックする
・住宅ローン控除を受けるには確定申告をしなければならない
・借入限度額は、認定住宅かそれ以外かで変わる
建築されてから期間や耐震基準をチェックする
中古マンションで住宅ローン控除を受けるときの1つ目の注意点は、「建築されてから期間や耐震基準をチェックする」ことです。中古マンションに住宅ローン控除を適用するには、その建物が、次のいずれかの条件を満たしていなければなりません。
・建築されてから20年(マンションなどの耐火建築物は25年)以下
・新しい耐震基準に適合している(1982年以降に建てられたものは適合)
1982年以降に建てられたマンションなら、いずれかには適合します。どちらにも該当しない中古マンションでも、取得日までに耐震改修を行うことを申請し、住みはじめる日までに耐震基準に適合したことを証明できれば、住宅ローン控除を適用できます。
住宅ローン控除を受けるには確定申告をしなければならない
中古マンションで住宅ローン控除を受けるときの2つ目の注意点は、「住宅ローン控除を受けるには確定申告をしなければならない」ことです。確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日(3月15日が土日祝日の場合、その翌平日)なので、その間に手続きをしましょう。
この際、必要な書類は次の通りです。
・本人確認書類の写し
・源泉徴収票(勤務先から入手)
・住宅ローンの残高証明(住宅ローンの借り入れ先から入手)
・登記事項証明書(法務局または司法書士から入手)
・不動産売買契約書の写し(売買契約時に不動産会社から入手)
確定申告の方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。記事で説明しているのは「売却時の確定申告」ですが、手続きの流れはそう変わりません。
借入限度額は、認定住宅かそれ以外かで変わる
中古マンションで住宅ローン控除を受けるときの3つ目の注意点は、「借入限度額は、認定住宅かそれ以外かで変わる」ことです。
借入限度額は、住宅ローン控除を適用できる金額の上限を指します。例えば5,000万円の住宅ローンを組んでも、借り入れ限度額が3,000万円なら、住宅ローン控除を適用できるのはローンのうち3,000万円までとなります。
新築物件は省エネ基準により借入限度額が4つに分かれていますが、中古マンションは2つに分かれています。省エネ基準による区分は「認定住宅等か、それ以外か」です。
認定住宅等の中古マンションの場合、認定基準ごとに、借入限度額がそれぞれ次のように異なります。
・長期優良住宅
・低炭素住宅
・ZEH水準省エネ住宅
・省エネ基準適合住宅
【借入限度額2,000万円】
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