中古マンションを購入する際、なるべく安く買いたいと思うのは自然なことです。そのため、中古マンションの価格交渉は一般的に行われています。
しかし、最終的には売主がイエスと言わなければ購入することはできません。価格交渉には、売主の気分を害さないようにすることが1つのポイントになります。
この記事では、中古マンションの購入時にスムーズに価格交渉するためのポイントを詳しく解説しています。価格交渉しやすい物件の見極め方や、交渉タイミングについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
中古マンションの値引きは可能なのか
中古マンションの売主は、不動産会社の場合と、個人の所有者の場合があります。
不動産会社の場合は、自社で行ったリフォーム代や利益率を考慮したうえで、綿密に販売価格が決められるため、値引き交渉の難易度は高くなります。
売主が個人である場合は、売るかどうかの決定権も、値引きするかどうかの決定権も売主個人にあります。そのため、売主さえOKであるならば、値下げ交渉に応じてもらえます。
裏を返せば、売主が個人の場合、相場価格よりも大幅に高い金額設定だからといって値下げ交渉をしようとしても、売主がNOといえば購入することはできません。
そのため買い手には、値引き交渉をする際はもちろん、内見やその後の話し合いなどにおいても誠実な対応が求められることは留意しておくべきでしょう。
値引きは1割程度が相場
中古マンションの値引きは、1割程度を限度とするのが相場です。
たとえば、2,000万円〜3,000万円の不動産の値引き交渉をする場合、200万円〜300万円ぐらいの値引きが相場となります。
ただ、売主側も値引き交渉されることを前提として、相場よりも少し高めの金額に設定していることは珍しくありません。
適切な値下げのオファーを出すためには、周りの物件相場を知ることが重要です。自身で相場を把握したうえで、不動産会社と相談し、相場よりも高いと判断できる場合は値下げ交渉の余地は大きいでしょう。
しかし、過度な値引き交渉は門前払いになったり、売主からの印象を悪くしたりする可能性があります。
仮に相場より高い物件であっても、相場より高いので安くして欲しい旨をストレートに要求してしまっては拒否されやすくなります。
値下げを要求する際には、「予算を少しオーバーしてしまうので」というような穏便な言い方をするなど、相手の心情に配慮した交渉をすることが重要です。
端数切り捨てが一般的である
一般的に、マンションの購入価格を値引きしてもらう際には端数を切り捨てます。
たとえばマンションの価格が3,480万円だった場合、端数の80万円を値引いて3,400万円にできないか交渉するのがいいでしょう。
ただし、これはあくまで一般論です。実際にどれほど値引きしてもらえそうなのか、売主と相談のうえ判断する必要があります。
中古マンションの値引き交渉のコツ
中古マンションの値引き交渉を行う際には、いくつかポイントがあります。特に重要なものをピックアップして3つ紹介します。
値引き交渉は「この価格なら買う!」を前提に
値引き交渉における最大のポイントは、相手に購入意欲を見せることです。
売主からすれば、購入の話が流れてしまうとまた1から買い手探しをすることになります。特に、なかなか購入希望者が現れない場合、少し値下げをしてでも早めに売ってしまいたいという心理が生まれます。
売主に「すぐに買ってもらえるなら安くしても良い」と思ってもらえれば、値下げ交渉が成功する確率が高くなります。そのため、買い手側にはどれほど安くしてもらえるかといった交渉の仕方ではなく、いくらなら購入するという姿勢が重要になります。
前者の聞き方では、他の物件と比較しているんだなと思われ、敬遠されやすくなります。 逆に「いくらになったら買う」という発言は購入意欲の表れと捉えられるでしょう。
値下げ交渉では売主に購入意欲が伝わるよう心がけましょう。他の物件と比較するのではなく、「ここに住みたい」と思える物件を見つけたとときに、値下げ交渉するのがおすすめです。迷っている段階での安易な値下げ交渉は避けるのが無難です。
事前に住宅ローンの仮審査を受けておく
値下げ交渉を行う際には、先に住宅ローンの仮審査を受けておくことをおすすめします。
仮審査を受けておけばローンの借入可能額をある程度確定できるので、「この価格なら買う」という金額を売主に示しやすくなります。また、物件を購入するのに十分な財力があることを売主にアピールできるでしょう。
購入が決まった後のステップを一つ削減できるのもポイントです。そのため、早く売却したいと考えている売主は、値引に応じやすくなるでしょう。
周辺相場を把握しておく
マンションの値引きをする際、周辺の中古マンションの相場を把握しておくことは非常に重要です。値引き交渉を行う際の指標となるためです。
相場を調べる際は、立地や築年数、建物の規模などの条件が似ている物件を参考にしましょう。周辺相場を参考にし、価格が高いと感じる場合には、実際の取引事例を提示して値引き交渉を持ちかけると説得力があります。
周辺相場の調査方法には以下のようなツールが役立ちます。
レインズ(Real Estate Information Network System)
レインズとは不動産流通機構が提供する情報システムで、全国の不動産取引情報を検索できます。具体的な取引事例を確認し、相場を把握するのに非常に便利です。
不動産情報ライブラリ
不動産情報ライブラリとは国土交通省が運営する地域ごとの不動産取引情報を閲覧できるツールです。詳細なデータを基に、周辺相場を把握できます。
これらのツールを利用することで周辺の中古マンションの相場を正確に把握し、適切な価格交渉を行うための準備が整います。
具体的なデータをもとに交渉を進めることで、売主に対して説得力のある交渉が可能となります。
信頼できる不動産会社を通して依頼する
マンション購入時の値引き交渉は不動産会社を通じて行われます。そのため、信頼できる不動産会社探しが重要になります。
信頼できる不動産会社を見つけるためには、実績が豊富で力のある会社かどうかを見極めましょう。
特に確認するべきは仲介実績や物件提案の質です。これらを確認するためにはホームページを隅々までチェックしたり、口コミを調査したりしましょう。
依頼する不動産会社がなかなか見つからない場合は複数の不動産会社に査定を依頼し、提案内容や提案力、親身になってくれるかなどを軸に、比較検討して適切な依頼先を決めましょう。
値引き交渉の理由や熱意を示す
マンションの値引き交渉では、値引きしてもらいたい理由やこの金額なら買うという熱意を示す必要があります。そのために、買付証明書(購入申込書)を提出するのが有効です。
買付証明書に決まった書式はありませんが、購入申込額や手付金の金額などの購入条件を書くのが一般的です。
具体的な金額を記載したうえで、価格交渉の理由をなるべく具体的に伝えることで、値引きの理由や購入の熱意を示せるでしょう。値引き交渉の理由には、以下のようなものが挙げられます。
どのような理由を記すかは購入を検討しているマンションの状態や価値に大きく左右されます。不動産会社の担当者と相談しながら適切な理由を提示できるよう慎重に進めましょう。
ただし、買付証明書を提出して値引き交渉にも応じてもらえた場合、購入を安易にキャンセルしてはいけません。
買付証明書には法的拘束力はないものの、「契約を結ぶ意思がある」「契約成立に向けて双方の信頼関係が築けている」と示すことにはなります。
この段階で購入をキャンセルすると、購入希望者に契約締結上の過失があるとして、売主から損害賠償を請求されるかもしれません。
値引きされやすい物件を狙う
値引き交渉には熱意やタイミングだけでなく、時期や物件の条件も重要になります。
例えば、内見希望者や購入検討者が多い時期であれば、売主は「今値下げしなくても、別の人が値下げなしで購入してくれるかもしれない」と思うものです。
また次のような条件が悪い物件は、条件の整った物件に比べて購入希望者が少なくなります。そのため、値下げ交渉はしやすいと言えるでしょう。
- 売り出してから一定期間が経過している
- 築年数が経っている
- 部屋の状態が悪い
それぞれの物件について、もう少し詳しく解説します。
売り出してから一定期間が経過している
マンションが売り出されてから一定期間が経過している場合、マンションの価格が下げられ始める傾向にあります。
基本的に、マンションは売り出し時に価格を高めに設定し、時間経過に応じて徐々に値下げしていくものです。
契約が成立せずに時間が経ってしてしまうと、売れないマンションのイメージが付いてしまいさらに売れなくなってしまいます。売主は契約成立に向けて本格的に動き出すため、値引き交渉に応じやすくなるでしょう。
一般的に不動産を売りに出してから買い手が見つかるまでの期間の平均は3か月とされています。
3か月を過ぎると、いわば売れ残りに近いものになります。売主に焦りが生まれ、値下げを検討するタイミングとなるため、値下げ交渉が成功しやすくなります。
ただし、1~3月は異動に合わせて物件の購入や売却を検討する人が増え、不動産取引が活発に行われています。この時期は値下げ交渉の難易度が高くなるため、時期をずらすとよいでしょう。
築年数が経っている
マンションの価値は築年数と並行して低下していきます。
マンションの資産価値は築年数が20年以上経つと低下が緩やかになり、30年以上経つと新築時と比較して半額程度まで下がると言われています。
築年数が5年以上経つと、それ以上の価値を下げたくないという心理が生まれ、値引き交渉が成功する確率も高くなります。
部屋の状態が悪い
マンションの部屋の状態は値引き交渉の材料になります。
部屋の状態が悪く、修繕やリフォームが必要になる場合、その価格分の値下げ交渉をするのが有効です。これらの費用がどのくらいになるのか見積もりを出し、金額を提示することで、値下げ交渉に説得力が生まれます。
特に水まわりや壁紙に欠陥などがある場合は交渉をしてみると良いでしょう。
値引き交渉の注意点やNG
物件の値引き交渉を成功させるためには、値下げ交渉がうまくいかない例も知っておくとよいでしょう。
売り出し直後の物件は成功率が低い
まず、売り出し直後の物件の値下げ交渉は難しいと考えておきましょう。
売り出し直後は、しばらくはこの価格で売りだして様子を見てみようという気持ちが強く、焦りもないため価格交渉は失敗しやすくなります。
周辺相場より初期設定価格が低い物件は成功率が低い
元々の売出価格が周辺の中古マンションより低い場合、値下げの交渉は厳しいでしょう。
購入を検討しているマンションの初期設定価格が周辺マンションの相場と比較して高いのか低いのか、確認したうえで値下げ交渉をするか検討しましょう。
ただし、売り出し価格が周辺相場よりも低かったとしても、どうしても住みたい物件があるなら諦めてはいけません。
たとえば同時期に売り出されていた、同じふたつの建売住宅で、1棟を値引き交渉せず少し無理して購入したとしましょう。
その後もう1棟が値引きされ、自分の購入額より低く売れたら、結果的に損をしてしまいます。
心残りがあるのであれば、思い切って値引き交渉に踏み切ってみても良いかもしれません。
大幅な値下げ交渉は悪印象
失敗を前提としての、大幅な値下げ交渉をするのはおすすめできません。
最初に大幅な値下げ額を提示し、そこから値下げ希望額を減らしていくつもりであってもです。このような交渉の仕方は売主に悪印象を与え、値下げ交渉の成功率を下げてしまいます。
売主は不動産会社と協力しながら、なんらかの戦略や意図をもって価格を設定しています。値引き交渉を受けることを前提に少し高めの値付けをしている場合もあります。
ただし、これくらいの金額が妥当、最低でもこの値段では売れるというような、基準となる価格は知っているはずです。いきなりその基準を飛び越えるような要求をすれば、売主や不動産会社からの心象は悪くなり、交渉のテーブルにすらついてもらえないでしょう。
値引き交渉の具体的な流れ
値引き交渉をする際、具体的にどのような流れで交渉を進めるのでしょうか。
売主に悪印象を持たれないためにも、値引き交渉は適切な流れで行いたいものです。
具体的にどのような流れで値引き交渉を進めるのか解説します。
1. 事前調査
なんの準備もなしに値引き交渉をしても断られてしまうのがオチです。
大きな額の取引なので、売主と気まずくならないようにしたいのが買主としての本音でしょう。そのためにも、事前に調査を実施して値引き交渉に挑むのが重要です。
実際に調査するべきポイントをお伝えします。
売却動機
売主がなぜマンションを売却しようとしているのかは、事前に調査しておくべきです。
売却動機によっては値引きしてでも早く手放したいケースもあります。どのような売却動機が考えられるかいくつか紹介します。
売却動機 | 交渉時の備考 |
離婚 | 財産分与のための売却など、早期売却を望んでいる場合も多く、値引きに応じてもらいやすい |
転勤 | 異動までの売却を目指し、早期売却を望んでいる売主が多いため、比較的値引きが成功しやすい |
相続 | 相続したマンションに本人が住まず、売却したいと考えている場合は値引きがしやすい |
何かしらの事情があり売却を急いでいる売主の場合は、比較的値引き交渉が成功しやすいです。
それに対してローンを完済してすでに新しいマイホームで暮らしている売主は、値引きせずに売れるのを気長に待つ人が多いです。
ほかにも、人気エリアのマンションは購入したい人が多いため、値引き交渉に応じてもらえる可能性は低いと言えるでしょう。
販売期間
マンションの販売期間も事前に確認しましょう。
売り出しからあまり期間が経っていないのにもかかわらず値引き交渉をしても、売主は「まだ待っていれば値引きせずに購入してくれる人が現れるかもしれない」と考えます。
ここで値引きをしたら今後の売却活動でさらに値引きしなくてはいけなくなるかもしれないと、値引きに応じてもらいにくいです。
マンションの販売開始から少なくても3か月は経っていると、値引きにも対応してもらいやすくなるでしょう。
値下げ履歴
すでに値下げ履歴のあるマンションの場合、売主としては「初期設定価格よりもこれだけ値引きしている」という認識になります。
さらに値下げ済みの価格も利益や損失を考慮してつけられた値段であるため、よほどの理由がない限り更なる値引き交渉は難しいと言えるでしょう。
どうしても値引きしてもらいたいのであれば、不動産会社に相談してそれ相応の理由を一緒に見つけていくしかありません。
他の購入希望者がいるか
ほかに購入希望者がいたり、人気のマンションだったりする場合、値引き交渉は厳しくなります。
値引きをしなくてもほかの買主が購入してくれるのであれば、売主としては値引きに応じる理由がありません。
人気エリアのマンションのような人気物件は、値引きなしでの購入を前提に考えておいた方が良いかもしれません。
周辺の中古マンションの相場
値引き交渉をするにあたり、大幅な値引き交渉は売主に不快感すら与えてしまいます。
周辺の中古マンションの相場価格を基にどれほどの値引きが可能でありそうか、不動産会社と相談してみましょう。
また、売主が個人の場合、それぞれ違う事情を持ってマンション売却に踏み切っています。
そのため、交渉しやすいタイミングや理由もそれぞれです。
それに対して売主が法人の場合、売買希望価格はしっかり計算したうえで決めていることが多いため、値引きは難しめでしょう。
売主が個人なのか法人なのかも事前に確認しておきたいポイントです。
2. 住宅ローンの事前調査
住宅ローンの事前審査を値引き交渉前に済ませておけば、物件を購入する準備が万全であることを売主に対してアピールできます。
住宅ローンの事前審査とは、住宅購入やリフォームのために融資を受ける前に行われる審査です。
事前審査を通過できていると本審査がスムーズに進められます。
3. 値引き交渉を申し出る
事前調査や審査をすべて終えて準備が整ったら値引き交渉に踏み切りましょう。
売主としてもマンションに契約前に値引き交渉をされたら身構えてしまうため、準備を万全に整えてから交渉を始めるのがおすすめです。
なぜ値引き交渉を申し出ているのか、具体的な理由はこのタイミングで提示しましょう。
値引き交渉で提示する理由は誰が聞いても納得してもらえるよう根拠を添えるようにしましょう。
4. 買付証明書(購入申込書) の提出
買付証明書とは、不動産の購入希望者が特定の物件を購入したい旨を正式に売主に対して表明するための文書です。
口頭やメールだけではなく買付証明書という書面で、正式な購入意思を示すことで、取引の信頼性が高まります。
さらに書面上では交渉の具体的な条件を明示するため、それを基に売主が値引きを検討しやすくなり円滑に交渉を進めやすくなるのです。
後から値引きをなかったことにしたいなどの言った言わない論争になっても、書面に残しておけばトラブルを防げます。
確認の際にも役立つため、契約をスムーズに進めるのにも有効です。
5. 契約同意・住宅ローンの本審査申し込み
値引き交渉のための買付説明書を提出したら、あとは売主からの返答を待ちます。返答を待っている間に下記の条件を確認しておきましょう。
- 売買金額
- 引き渡し時期
- 手付金の額
- 引き渡し猶予の有無
- 瑕疵担保免責の有無
- その他特約事項
このとき、住宅ローンを組む方は本審査に向けての申し込みを進めておいても良いでしょう。
6. 売買契約を締結
値引き交渉ができ、マンションの購入価格が決定されたら、売買契約を締結します。
価格以外に、物件の詳細、支払い条件、引き渡し時期などもこのタイミングで双方が合意します。
このとき、手付金を支払います。一般的に手付金はマンション購入価格の5〜10%です。
具体的な金額は売主と相談のうえ決定されるため、不動産会社からの連絡を待ちましょう。
7. 決済・物件の引き渡し
決済が完了したら、物件の引き渡しになります。
大きい金額の取引となるため、誤りがないよう十分に確認しましょう。
まとめ
中古マンションの値引き交渉は一般的に行われており、売主の言い値で買わなくてはいけないと考える必要はありません。適切なタイミングや方法で交渉を行えば、目当ての物件が少しお得に購入できるかもしれません。
しかし、値引き交渉がしやすい物件や交渉のタイミングの見極めには慎重になる必要があります。
今回の記事で、値引きできる金額の相場を知り、適切なタイミングで熱意が伝わる値引き交渉の方法が伝われば幸いです。
不動産を購入する際に最も重要なポイントは、信頼できる不動産会社を見つけることです。
マンションの売却と購入を同時に行いたい方には、すむたす売却をおすすめします。
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