売れないマンションを処分する方法3選|売れない理由や相続放棄も解説

マンション売却

売れないマンションは、所有しているだけで維持費や固定資産税などがかかります。いっそ手放したいと感じるかもしれませんが、売れないからといって、所有権を放棄することはできません。売れないマンションを処分するには、売却もしくは譲渡により所有権を移転させる必要があるのです。

この記事では、マンションが売れない理由と処分する3つの方法を解説。早く手放す方法や、売れないマンションの相続が想定されるときに検討したい相続放棄についても紹介します。

 

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売れないマンションは放棄できるのか?

売れないからといって、所有しているマンションを放棄することは、基本的にできません。所有権放棄はできないため、何らかの手段で物件の引き受け先を自分で見つけなければならないのです。

マンションを所有している=マンションの所有権を有しているということであり、あくまでも第三者への売却や譲渡による「所有権移転」によってしか、所有権を手放すことはできないのが原則です

マンションは所有しているだけで、月々の管理費や修繕積立金、毎年の固定資産税を支払わなければなりません。「いつか手放そう」と考えながら所有期間が長引くと、その分だけ損失が大きくなると考えた方がよいでしょう。

なお、国や自治体といった公的機関に寄付することも、現実的にほぼ不可能です。

例えば国がマンションの寄付を受け入れてしまうと、維持・管理のための費用を国の予算でまかなうことになります。自治体が受け入れるとしても同様です。公的機関が個人からの寄付を受け入れてしまうと、「固定資産税を回避するために、寄付してしまおう」という個人を優遇することにもなり得るため、不平等と見ることもできます。

行政が土地取得を必要としている場合は寄付を受け入れてもらえることもありますが、現実的には難しいと考えておきましょう。例えば財務省は次のような見解を示しています。

寄付の申出があった場合、土地等については、国有財産法第14条及び同法施行令第9条の規定により、各省各庁が国の行政目的に供するために取得しようとする場合は、財務大臣と協議の上、取得手続をすることとなります。なお、行政目的で使用する予定のない土地等の寄付については、維持・管理コスト(国民負担)が増大する可能性等が考えられるため、これを受け入れておりません。

出典:国に土地等を寄付したいと考えていますが、可能でしょうか │ 財務省

 

マンションが売れない理由

マンションが売れない理由は、「物件に問題がある場合」「売り手側に問題がある場合」の2つに大別できます。まずは売れない理由を突き止め、それに合った対策を取りましょう。

物件に問題がある場合

物件に問題がある場合
マンションがなかなか売れないときは、物件に次のような問題がないかを見直してみましょう。

原因

対策

立地が良くない

・価格を引き下げる

・物件の広さなどの他の魅力を訴求する

築年数が古い

・価格を引き下げる

・リフォームを前提として売り出す

人気のない間取りである

・ターゲットを絞った訴求を行う

室内が汚い

・掃除を徹底する

・部分的なハウスクリーニングを検討する

いわゆる事故物件である

・価格を引き下げる

・事故物件に対応できる買取業者を探す

近隣に競合物件が多い

・売り出し時期をずらす

物件が売れにくい特徴を持っている場合、「リフォームすれば売れるかもしれない」と考えてしまいがちですが、売却するためにマンションをリフォームすることはおすすめできません。

なぜなら、リフォームに多額の費用を費やしたとしても、売却金額でその費用を回収できる保証がなく、結果的に損をする可能性が大きいからです。また近年は「あえて安い物件を買って、自分でリノベーションを施し、理想の住まいを手に入れる」というライフスタイルが定着しつつあります。売主が先にリフォームを施してしまうと、販売価格が上がってしまい、そのようなターゲット層を逃すことにもつながるでしょう

基本的には「広告戦略や購入希望者に対する訴求を工夫する」「適切な値下げをする」のどちらかが有効だと考えておきましょう。

売り手側に問題がある場合

物件に問題がなくても、売り手側に問題があり売れないケースもあります。次のような問題がないか見直し、適切な対策を取りましょう。

原因

対策

売り出し価格が適切ではない

・適正価格を調べ、売り出し価格を見直す

内覧対応が良くない

・事前の清掃を徹底する

・当日の対応で売主は目立たないようにする

・内覧者の疑問に誠意をもって答える

不動産会社が売却活動を怠っている

・不動産会社や担当者を変える

基本的にマンションの売却活動は、ほとんどが不動産会社の担当者に一任されています。売主が工夫できる点は、「内覧時に室内を綺麗にしておく」「購入希望者の質問に誠意をもって答える」くらいでしょう。

価格設定、集客方法、内覧の対応等に違和感を覚えたら、担当者と相談して一緒に戦略を練り直すことが大切です。この際、価格が適切にも関わらず、値下げばかりを提案してくる場合は担当者や不動産会社を変更することをおすすめします。

それぞれの原因や対策について、こちらの記事でより詳しく解説しています。マンションが売れないまま半年以上が経とうとしている方は、記事を読みながら、対策を練ってみてください。

マンションが売れない8つの原因と対策について徹底解説!早期売却をするためのコツとは?

媒介契約の形態と不動産会社による囲い込み

不動産会社に仲介を依頼する際、1社の不動産会社のみと契約する「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」を締結するケースが多くなっています。

これらの契約では不動産会社の積極的な売却活動が期待できる反面、売主・買主双方からの仲介手数料を独占するため、他社からの購入希望者による内覧等を受け付けないという不正を働くケースがあります。これは「囲い込み」と呼ばれ、なかなか売れなかったり、不利な条件で売却せざるを得なくなったりする要因の一つです。

買い込みが疑われる場合、レインズの登録状況を「登録証明書」で確認しておきましょう。

 

売れないマンションを処分しないとどうなる?

「売れない」「放棄もできない」とマンションを処分し続けているとどのような事態が起こるのでしょうか。売れないマンションを所有し続けることで生じ得る3つのリスクを紹介します。

維持費用の負担が発生する

売れないマンションを所有し続けている間も、毎月の管理費・修繕積立金、毎年納める固定資産税・都市計画税といった固定費の支払いは続きます。処分せず放置する期間が長引くほど、固定費による損失が膨らんでいってしまうでしょう。

固定資産税は「固定資産税評価額×1.4%」、都市計画税は「固定資産税評価額×0.3%」で算出するのが原則。管理費・修繕積立金は物件により異なるものの、グレードの高い物件では月数万円になるケースも少なくありません。

場合によっては、こうした維持費用だけで年間数十万円の損失になるケースもあります。損失を最低限に抑えるため、できるだけ早期に処分を試みるべきなのです。

資産価値が低下してますます売りにくくなる

一部の例外を除き、マンションは築年数が経過するほど価値が低下していきます。売れないマンションを放置すると資産価値がどんどん低下し、ますます売れにくくなってしまうかもしれません。

東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」によると、首都圏で販売された中古マンションを築年数別にみたとき、平均成約単価は次のようになっています。

築年数平均成約単価(1m2当たり)
築5年以下105.21万円
築6年〜10年以下93.78万円
築11年〜15年以下79.86万円
築16年〜20年以下74.01万円
築21年〜25年以下61.91万円
築26年〜30年以下44.57万円
築30年超38.98万円

出典:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)

築20年・70m2のマンションを所有していた場合、すぐに売却すれば約5,180万円で成約する可能性があるものの、5年放置すると約4,333万円まで値下がりするかもしれないということです。資産価値を保ったまま売却するには、なるべく早く手放す必要があります。

築古マンションが売れない理由や売れないときの対処法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

相続人に負担を押し付けることになる

売れないマンションを所有したまま死亡してしまうと、配偶者や子などの相続人に負担を押し付けることになりかねません。

相続はプラスの財産だけでなく、負債などマイナスの財産も含めてすべて相続するのが基本です。売れないうえに収益を上げるのも難しいマンションを相続したところで、相続人に損失を負わせるだけになるかもしれません。

高齢の方や持病のある方で売れないマンションを所有しているケースでは、とりわけ早期の処分を検討した方がよいでしょう。

 

売れないマンションをどうする?処分する3つの方法

売れないマンションを手放す方法には、「適切な対策を取ったうえで、仲介での売却活動を続ける」「買取に切り替える」「無償譲渡する」の3つがあります。それぞれどんな方法なのか、どのくらいの費用がかかるのかを解説。

併せて、各方法のメリット・デメリットもわかりやすく紹介していきます。

(1)仲介による売却

不動産仲介業者のビジネスモデル

一般的に、マンションの売却は「仲介」で行われます。仲介とは、そのマンションに対して「住みたい」「欲しい」と感じる個人を、不動産会社を通して探す方法です。「この物件に住みたい」と思ってくれた個人に対して売却をするので、相場やそれ以上の価格で売却することも可能です。

すでに仲介での売却に失敗している場合でも、次のような工夫をすることで、仲介で売れるかもしれません。

売れないと諦める前に工夫できること

まず、どれくらいの期間で売れない場合に工夫が必要となるのでしょうか。

東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」によると、首都圏の中古マンション市場でレインズ登録から売買契約成立までにかかった期間の平均は80.1日(2023年)でした。また、ここ10年間で最も期間が短かった2015年は65.5日となっています。

上記を踏まえると、中古マンションはおおむね2〜3ヶ月程度で売れるのが平均的であり、3ヶ月以上売れ残るようなら何かしらの工夫が必要と考えられるでしょう。仲介による売却でできるおもな工夫は次のとおりです。

仲介にかかる費用

マンションを仲介で売却すると、次のような費用がかかります。物件の売却価格の4%ほどだと考えておきましょう。

仲介手数料売却価格の3%+6万円+消費税(上限)
抵当権の抹消費用自分で手続きをする場合:2,000円

司法書士に依頼する場合:2万円ほど

売却契約の印紙税売却価格が1,000万超え5,000万円以下の場合:1万円(2027年3月31日までの軽減税額、本則は2万円)

売却価格が5,000万超え1億円以下の場合:3万円(軽減税額、本則は6万円)

譲渡所得が出た場合の税金所有期間5年以下:売却益の39.63%

所有期間5年越え:売却益の20.315%

参考記事:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」
https://www.mlit.go.jp/page/content/001712685.pdf

(2)買取による売却

不動産買取業者のビジネスモデル

仲介でなかなか売れないマンションは、「買取」で早めに売ると良いかもしれません。買取とは、再販を目的とする不動産会社にマンションを買い取ってもらう方法のこと。リフォームやリノベーションなどの手を加えたうえで、「リフォーム済み物件」として一般市場へ売りに出します。

業者にとってマンションを買うことは仕入れであり、手を加えたうえでの再販を前提としているため、基本的にはどのようなマンションでも買い取ってもらうことができます。

売却価格は仲介の7~8割ほどになることが多いものの、買取会社との契約が完了すれば、数日から数週間程度で物件を売却することができます。

買取による売却のメリット・デメリット

マンションを買取で売却するにあたっては、次のようなメリット・デメリットがあります。

 買取による売却のメリット
 ・売却までの期間が短く、スピーディに現金を得られる
 ・不動産会社に直接販売するため、仲介手数料が発生しない
 ・通常の売却が難しい物件も取り扱ってもらえる可能性がある

 買取による売却のデメリット
 ・通常の売却に比べると売却価格が低め
 ・物件によっては買い取ってもらえないことがある

以上を踏まえると、築年数が古い物件や立地が悪い物件など、個人の買い手がつかなさそうな物件は買取が向いているといえるでしょう。

買取にかかる費用

マンションを買取で売却すると、次のような費用がかかります。

抵当権の抹消費用自分で手続きをする場合:2,000円

司法書士に依頼する場合:2万円ほど

売却契約の印紙税売却価格が1,000万超え5,000万円以下の場合: 1万円(2027年3月31日までの軽減税額、本則は2万円)

売却価格が5,000万超え1億円以下の場合:3万円(軽減税額、本則は6万円)

譲渡所得が出た場合の税金所有期間5年以下:売却益の39.63%

所有期間5年越え:売却益の20.315%

「仲介手数料」は買取ではかかりません。仮に物件が3,000万円で売れた場合、仲介手数料だけで100万円ほどかかることもあります。売却価格が下がったとしても、仲介手数料を節約できるため、それほど手残り金額は差が出ないこともあります。

 

(3)無償譲渡

買取でも売れないマンションも、「無償譲渡」なら引き受け先が見つかるかもしれません。無償譲渡とは、その不動産を欲しいと感じる個人や法人を探し、その名の通り無償で譲渡することです。

無償譲渡での引き受け先には、以下の例が挙げられます。

  • 不動産を欲しがっている知人
  • 空き家バンクで見つけた個人または法人
  • 不動産会社
※空き家バンクとは?
空き家保有者と譲渡・購入・賃貸の希望者をつなぐマッチングプラットフォームで、自治体が主体となり運営しています。

無償譲渡のメリット・デメリット

マンションを無償譲渡する場合のメリット・デメリットも確認しておきましょう。

 無償譲渡のメリット
 ・お金がかからないのでもらい手がつきやすい
 ・譲渡する側には費用負担が発生しないケースが多い

 無償譲渡のデメリット
 ・売却による利益を得られない
 ・税金負担や契約内容などでもらい手とトラブルが生じやすい

築年数がかなり経過している物件、空室のまま長年放置されていた物件など、通常の売却市場では価値がつきにくいマンションは無償譲渡を検討するのもおすすめです。

無償譲渡にかかる費用

上記のとおり、無償譲渡では譲渡される人が費用や税金を支払うことはあっても、譲渡する側が費用や税金を支払うことはあまりありません。譲渡する側が費用を支払うかどうかは、「譲渡先は誰なのか」「その物件の時価はいくらなのか」により異なります。

【譲渡先が個人の場合】
個人から個人に無償譲渡するケースでは、譲渡する側に税金が発生することはありません。ただし、譲渡される側は場合によって贈与税が発生する可能性があるでしょう。
【譲渡先が法人の場合】
譲渡先が法人のケースでは、譲渡する側に「みなし譲渡税」がかかることがあります。みなし譲渡税とは、「譲渡する不動産を時価で売った場合、どのくらいの売却益が発生するか」に基づき、譲渡所得税を計算することです。例えば1,000万円で買った不動産の時価が1,500万円になっていた場合、500万円の「みなし譲渡所得」が生じ、これに対してみなし譲渡税がかかります。ただ、このような「購入時より価値が高くなったマンション」は、ほかの方法で売れるかもしれません。買い取ってくれる買取業者を探したり、無償譲渡を受けてくれる個人を探したりしてから、無償譲渡を検討すべきでしょう。

 

売れないマンションを相続しないための相続放棄

親の所有する売れないマンションを相続することが想定されるものの、有効な活用方法や売却の見立てがないケースもあるでしょう。

相続しても売却や活用が難しいと見込まれる場合には、相続放棄するのも一つの方法です。マンションを相続したときの選択肢や税金の計算については、こちらの記事で詳しく解説しています。

相続を知ったときから3ヶ月以内の手続きが必要

売れないことが見込まれるマンションのような「引き継ぎたくない相続財産」がある場合、相続放棄の手続きをすれば相続権を手放すことができます。

相続放棄を希望するときは、相続を知ったときから3ヶ月以内(通常は被相続人の死亡日)に家庭裁判所へ申述しなければなりません。ただし、相当な理由によってあとから相続財産の存在に気づいたと認められる場合には、3ヶ月以上経過していても放棄できるケースもあります。

相続放棄した相続人は、相続権を持つすべての財産を引き継ぐ権利を放棄することになります。

売れないマンションを相続放棄する際の注意点

相続放棄は一人の相続人が単独で手続きできるため、誰かが相続放棄するとほかの法定相続人の相続割合が変わってしまいます。ほかの相続人の相続内容にも影響が出るため、相続放棄の手続きをする場合、できる限り事前にほかの法定相続人に相談しておきましょう。

相続放棄では一部の相続財産だけを放棄することは認められていません。売れないマンション以外に現金・預貯金類・有価証券などプラスの財産があったとしても、相続放棄するとすべて受け取れなくなる点は要注意です。

仮に相続人全員が相続放棄してしまうと、相続放棄した相続人が引き続き物件の管理の義務を負います。家庭裁判所に申し立てて相続財産管理人を選定してもらえば、管理人に管理業務を委託することも可能です。ただ、管理委託にかかる経費を相続財産から支払いきれない場合、申立者が不足分を予納金として負担する必要があります。

マンションを簡単に売却する方法

マンションは「放棄」することはできないため、なんらかの手段で「売却」もしくは「譲渡」する必要があります。一般的な仲介による売却に失敗している場合でも、今回紹介した工夫を施すことで売れるケースもあるでしょう。

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すむたすマガジン編集部

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