不動産会社による「囲い込み」とは?対策を徹底解説

不動産屋の囲い込みについて解説マンション売却

マンションを売却する場合、多くの方が早期売却を期待します。ところが不動産会社に「囲い込み」をされてしまうと、売却に時間がかかり、結果的に売却価格も安くなるという悪循環に陥ってしまいます。

「囲い込み」について詳しく知っておき、被害にあった場合でも適切に対処できるようにしましょう。

【この記事の要点】

  1. 囲い込みは、不動産会社がより多額の仲介手数料を得る目的で行われる
  2. 囲い込みをされると売却期間が長くなり、成約価格も下がる傾向がある
  3. 囲い込みの有無は、他の不動産会社経由で調べることができる
  4. 知識を持つことが被害を未然に防ぐために重要
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囲い込みとは

はじめに、不動産会社の囲い込みについて簡単に説明します。

囲い込みとは、不動産会社が売り手から依頼された物件を、意図的に他社に紹介しない行為を指します。

囲い込みとは

本来であれば、不動産会社は「レインズ」と呼ばれる業界全体で物件の情報を共有しあうデータベースに依頼された物件を登録しなければなりません。また、レインズを通じて他社から購入希望などの問い合わせがあった場合は、その旨を依頼者に報告する義務を負っています。この制度は物件の早期売却という依頼者の目的を優先しようという考えが反映されています。

しかし囲い込みをする不動産会社は、レインズへの情報登録を怠ったり、他社から買い手の紹介があった場合でもすでに申し込みが入っているなどと虚偽の報告をして断ろうとしたりするのです。

不動産会社がこのような行動を取る理由は、売り手と買い手の両方から仲介手数料をもらうためです。売り手と媒介契約を結んだ不動産会社は、自社で買い手を見つければ、売り手と買い手の両方から仲介手数料をもらうことができます。
このような取引を両手仲介と呼びます。

両手仲介の仕組み

一方、他社からの紹介で買い手が見つかることを片手仲介と呼びます。片手仲介の場合は、売り手からしか手数料をもらうことができません。

片手仲介の仕組み

なお、囲い込みが行われるのは基本的に専属専任契約もしくは専任媒介契約をした場合です。専属専任契約と専任媒介契約は、それぞれ以下のような契約のことを指します。

専属専任契約:自己発見取引が可能であり、仲介を1社にのみ依頼する媒介契約

専任媒介契約:自己発見取引が不可能で、仲介を1社にのみ依頼する媒介契約

専属専任契約と専任媒介契約はどちらも仲介を1社にのみ依頼できる媒介契約です。他の不動産会社を通して売却できない分、契約している不動産会社に依存することとなり囲い込みを受けるケースが多くなってしまうのです。

囲い込みされずに物件を売却する方法

不動産売却の成否は、信頼できる不動産会社や担当者を見つけられるかどうかにかかっています。しかし、多くの方にとって不動産売却は初めての経験ですので、会社の誠実さを見抜くのは難しいでしょう。

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囲い込みの問題点

「囲い込み」の問題点は以下の2つが挙げられます。

  • 売却活動が長期化する
  • 値下げをされやすい

それぞれ説明していきます。

売却活動が長期化する

囲い込みは意図的に他社からの紹介を拒むため、売却活動が長期化するリスクがあります。

 一般的な売却活動を行う不動産会社であれば、自社で買い手を探すのと並行して、レインズを通した他社からの買い手の紹介にもオープンであるため、買い手は比較的見つかりやすいです。

しかし、囲い込みをされている場合、媒介契約を結んだ不動産会社しか買い手を探せていない状態となるため、通常よりも売却までに時間がかかってしまいます。

また、一定期間が経過しても売れ残っている物件は、他社から何か問題がある物件かもしれないというレッテルを貼られやすくなり、さらに問い合わせが減ってしまうという悪循環に陥ります。

値下げをされやすい

先述したように、囲い込みをされている場合、なかなか買い手が見つからないことがあります。

そんな時の常套手段として、不動産会社は物件が売れないのは価格が高いからだと依頼主を説得し、物件の値下げをしようとすることがあります。

不動産会社が得る仲介手数料は物件の成約価格に比例するため、健全な不動産会社であれば物件の値下げには慎重になるはずです。しかし囲い込みを行う不動産会社は、両手仲介で2倍の手数料を得ることを目的としていますから、多少の値下げであれば躊躇せずに要求することができます。

例えば、4,000万円の物件を片手仲介(仲介手数料は3%)で売却した場合、不動産会社は売主側から120万円の成功報酬を得ることができます。

一方で、自社で見つけた買い手の予算が3,500万だった場合、売り手に値下げ提案をして3,500万円で契約を成立できれば、売り手と買い手からの両方から仲介手数料(3%)を得ることができ、報酬は105万円×2人分で合計210万円となります。

このように売却価格を多少値下げしても、自社で買い手を見つけて両手仲介を成立させることができれば、不動産会社にとっての利益は大きくなるのです。

しかし売主にとっては、値下げをされてしまうと売却後に手元に残る資金が減ってしまい、その後の生活や人生設計そのものに支障がでかねません。値下げの話をしきりに持ち出してくる不動産会社には注意したほうが良いでしょう。

囲い込みされているか確認する方法

媒介契約から一か月経過しても、問い合わせが一切入らなかったり、執拗に値下げを要求される場合は、囲い込みを疑ってみるべきでしょう。

このような時は、他の不動産会社を通して、自分の物件の情報がレインズ上で正しく記載されているか調べてもらいましょう。

商談中と記載されていたり、問い合わせをしてもまだ図面を作成しているなどと虚偽の理由を並べて断ってくる場合は、囲い込みをされている可能性が非常に高いです。

不動産会社側に非がある場合、売主は媒介契約を一方的に解消することができます。不動産会社を変える方法については、以下の記事を参考にしてみてください。

また、不動産会社は、専属専任媒介契約の場合1週間に1度専任媒介契約の場合は2週間に1度以上の頻度で、営業報告をしなければなりません。

そのため、不動産会社からの営業報告がない場合も囲い込みをされている可能性が高いです。

レインズの登録状況を確認する

囲い込みをされているか確認する方法の一つとして、上記したように、レインズの登録状況を確認する、というものがあります。

宅地建物取引業法第34条の2により、専任媒介契約の場合は契約締結日から7日以内、専属専任媒介契約の場合は契約締結日から5日以内にレインズに登録することが義務付けられています。

レインズへの登録後には登録証明書が発行されます。この証明書で取引状況を確認することで囲い込みをされているか確認できるでしょう。

登録証明書を入手したらまずは記載のURLにアクセスしIDとパスワードを入力します。すると、自分の物件の取引状況が「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つのステータスで確認できます。

ただし、レインズの登録を掻い潜るために不正を働こうとする不動産会社もあるため注意が必要です。なかには登録証明書発行後に、レインズから物件を削除する不動産会社もあります。

また、図面を載せていなかったり、十分な情報を掲示していなかったりする悪質な不動産会社もあります。

そのため、物件が削除されていないかの確認、記載されている物件の情報の確認をするためにも、登録証明書を受け取ったらレインズを必ず定期的にチェックするようにしましょう。

他にも、レインズへの登録を避けるためにあえて一般媒介契約を勧めてくる不動産会社もあります。一般媒介契約では他の不動産会社とも仲介取引を行えてしまうため、不動産会社からすると自社で契約してもらえないリスクがあります。

不動産会社側から一般媒介契約を勧めてくる場合には、囲い込みを防ぐために、何か事情があるのではないかと一度疑ってみることも重要でしょう。

他の不動産会社に問い合わせをお願いする

取引について不動産会社から詳しい状況を説明してもらえない場合には、他の不動産会社に問い合わせをお願いして状況を確認しましょう。

購入したい物件があるにも関わらず、商談が進んでいる、売り出しを中止している、何かしらの理由があって内覧ができないなどの返答であった場合、囲い込みを受けている可能性が高いです。

商談の進捗が本当に不動産会社に言われている通りであるのかを、他の不動産会社に依頼して別の角度から確認することをおすすめします。

売却したい物件があるときも同様、他社からの内覧の問い合わせが少ない場合はあえて内覧を避けられている可能性があります。
このような場合にも他の不動産会社に問い合わせを依頼して状況の確認をしてもらいましょう。

囲い込みを防ぐための対策

不動産屋の囲い込みの対策

不動産会社に「囲い込み」をされないためには、以下の4つの対策が有効です。

  • 信頼できる不動産会社に売却を依頼する
  • 囲い込みはしないように担当者に伝える
  • 一般媒介契約も検討する
  • 買取保証をつける際によく検証する

以下でそれぞれを詳しく説明していきます。

信頼できる不動産会社に売却を依頼する

専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約を締結する不動産会社は、3〜4社の複数の不動産会社に相談して、比較した上で決めることがオススメです。

複数の不動産会社から売却方針や査定価格を聞くことで、囲い込みをしないような誠実で信頼できる会社かを見極めること大切です。

信頼できる不動産会社の選び方を知りたい方には、以下の記事がオススメです。

囲い込みはしないように担当者に伝える

不動産会社に囲い込みについて知っている旨を伝えることも有効です。

囲い込みは媒介契約違反であり、発覚した場合は行政処分の対象になります。そのため囲い込みについて知っていることを伝えれば、不動産会社に対して抑止力を働かせることができるでしょう。

具体的には、他社からの案内も積極的に受けてほしいと直接頼んだり、両手仲介にこだわるかという質問を投げかけることで、営業担当者にプレッシャーをかけることができ、囲い込みが容易にできなくなります。

囲い込みは、売り手にとってデメリットしかありません。囲い込みをしないように、不動産会社の担当者には事前にしっかりと伝えましょう。

一般媒介契約も検討する

囲い込みを防ぎたいのであれば、一般的に囲い込みがされにくいとされている一般媒介契約を検討してみるのが良いでしょう。

一般媒介契約では専属専任契約や専任媒介契約と違い、仲介してもらえる不動産会社が1社に限定されない媒介契約です。

ただし、あくまで囲い込みされにくいだけであり、レインズへの登録義務がないため囲い込みがもし行われていたとしても気付きにくいです。そのため、100%囲い込みはないとは言い切れません。

買取保証をつける際によく検証する

買取保証とは一定期間仲介売却で取引が成功しなかった際に、不動産会社があらかじめ決めていた額で対象の不動産を買取する売却方法です。

不動産会社が直接不動産を売却する買取は、仲介売却に比べて売却価格が低く設定されているケースがほとんどです。

売主からすると、買取保証をつけることは不動産を確実に売却できるため一見メリットしかないようにも感じるでしょう。

しかし、低い価格で対象の不動産を買取したい不動産会社による囲い込みや専任返しが起きやすいというデメリットがあるのも事実です。本当に買取保証をつけてもよいか、契約前に検討するようにしましょう。

囲い込みは違法なのか

不動産を売却したい方からすると、囲い込みは違法な活動ではないのかと疑いの目を向けたくなるでしょう。

しかし、囲い込みの行為自体は宅建業法違反には該当せず、罰則もありません。

ただし宅地建物取引業法第34条の2で規定されている通り、専属専任媒介契約・専任媒介契約であるにも関わらずレインズ登録をせずに囲い込みをしていた場合は宅建業法違反になります。

また第13条(情報提供義務)により、レインズへの登録はしているものの売主の承諾なしに紹介依頼や内覧希望を断れば、レインズの利用規定違反になる場合もあります。

まとめ

囲い込みは不動産を売却するときでも購入するときでも起こりうります。

不動産会社の安く不動産を買取したいという思惑やり、売却と購入どちらにも仲介に入り二重で仲介手数料を払ってもらおうという思惑により囲い込みは行われます。

いずれにしても囲い込みは売主・買主にとって不利益を被るため、不動産取引をする中では避けたいものです。

仮に囲い込みを受けていると感じた場合には、契約解除を視野に入れましょう。

囲い込みは、どんな契約形態でも起こり得ます。
信頼できる不動産会社を見つけることが囲い込みを受けない一番の方法であるため、不動産会社は慎重に選びましょう。

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