マンションを売却してみると、希望の金額や期間で売却ができなかったり、思わぬトラブルに巻き込まれるなど、何らかの失敗のリスクがつきものです。
このようなリスクを抑えるためには、マンション売却でよくある失敗を理解しておき、事前に対策を立てておくことが重要です。
本記事では、マンション売却の売出前・売却期間中・売却後の3つのタイミングで発生しうる失敗と注意点について解説します。
売出前の失敗
マンションの売出前にある失敗は、おもに以下の5パターンです。
- 一社の不動産会社にしか査定依頼をしていない
- 不動産会社を査定額だけで選んでしまう
- マンション売却が得意でない不動産会社と契約している
- 自分にあった契約の種類を選べていない
- 売出前にリフォームをしてしまう
それぞれの失敗パターンについて、詳しく見ていきましょう。
一社にしか査定を依頼をしない
マンションを売却する際、最初にしなければいけないのが不動産会社から査定を受けることです。
査定では、売却するマンションがどれほどの価格で売れるのか不動産会社へ調査を依頼し、査定金額やその根拠などの回答をもらいます。なお、基本的に売却査定は無料です。
不動産会社は、売却査定の調査にあたり下記の情報をもとに査定を行います。
- 同マンションの過去の成約価格
- 同マンションで現在売出中の売出価格
- 類似マンションの過去の取引事例
- 売却時期やライバル物件の動向
- エリアの人気度合い
マンションの価格は、上記の要素を勘案することで大体の相場が決まります。しかし、査定担当者の判断や見解によっては査定価格にばらつきが出るため、できれば複数社の売却査定結果を比較しながら、最終的な売出価格を検討すべきです。
注意すべきなのは、相場より大幅な査定価格を提示し、「うちなら高く売れます」という根拠のない営業トークで契約を獲得しようとする不動産会社が一定するいることです。このような会社と契約してしまうと、後になって大幅な値下げを迫られる場合が多く、売却期間も長期化してしまいます。
まずは自分の物件の相場を知ることが大切ですので、最低でも2~3社に査定を依頼するようにしましょう。
不動産会社を査定額だけで選んでしまう
複数の不動産会社に査定をしてもらうと、さまざまな査定結果が提示されます。
売主の心情としては、自分のマンションを高額で査定してくれた不動産会社こそマンションの価値を理解してくれていて、高額で売却する力があるものと信じたくなります。
しかし、その切実な思いを逆手に売主の信頼を得ようと、相場よりも高い金額を提示する担当者がまれにいます。だからこそ複数社の査定結果を比較するのはもちろん、なぜそのような金額になるのか根拠を示して整然と語れる担当者を見極める必要があるのです。
高額査定を無条件に疑うということではなく、その査定価格の理由や根拠をしっかりと聞いたうえで、妥当なのか判断しましょう、
また、売主が抱えている事情や売却の希望条件を伝えることも、不動産会社を見極める方法のひとつです。腕の良い担当者であれば、丁寧にヒアリングを行い、的確な販売戦略を立案してくれるでしょう。「話を聞いてくれないし、会社側の都合で提案してくる」という場合は要注意です。
マンション売却が得意でない不動産会社と契約する
不動産会社には、それぞれ得意としている領域があります。
例えば、マンションか戸建てか、どこのエリアに強いか、売却と購入どちらに力を入れているか、などの違いがあります。
大前提として、中古マンションを売却するのであれば「中古マンションの売却」に専門性を持っている不動産会社を選びましょう。
自分にあった契約の種類を選べていない
売却を依頼する不動産会社とは、売却活動が始まる前に必ず下記のいずれかの媒介契約を締結します。
人気のある物件であれば、どの契約の種類を選んだとしても問題なく売却することできるでしょう。一方、「立地が良くない」「築年数が古い」など需要が低いマンションを売りたい場合は、不動産会社による熱心な売却活動が必要です。そのため、専属専任媒介契約か専任媒介契約を選ぶのが妥当でしょう。
ただし、この2つの媒介契約は「囲い込み」をされるリスクがあるため、誠実な不動産会社を見極めることが重要です。
【3つの媒介契約とその概要】
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
①依頼する会社数 | 1社専任で依頼する | 1社専任で依頼する | 2社以上依頼できる |
②レインズ登録期限 | 媒介契約翌日から5日以内の登録義務 | 媒介契約翌日から7日以内の登録義務 | 登録義務なし |
③活動報告の頻度 | 1週間に1回以上は報告する義務 | 2週間に1回以上は報告する義務 | 報告義務なし |
④媒介契約期限 | 最大3ヵ月 | 最大3ヵ月 | 契約期限なし |
⑤自己発見取引 | 不可:必ず仲介 | 可:自分で書類作成 | 可:自分で書類作成 |
⑥売主のメリット | ・窓口が1社で対応が楽
・最も細かなサポートが受けられる |
※専属専任媒介契約と同様 | ・複数社それぞれと対応する
・各社が競争し早期で高値の売却ができることがある |
⑦売主のデメリット | ・担当者の力量の影響が大きい
・囲い込みの心配がある |
※専属専任媒介契約と同様 | ・自分で内覧スケジュールを管理する
・売却活動の優先順位や広告費に影響することがある |
上記の表の補足説明
②:レインズとは、売却を任された不動産会社がマンションの情報を掲載して拡散し、ほかの不動産会社がマンションの情報を自由に閲覧し利用できる不動産ポータルサイトです。ただし、レインズは不動産会社専用のサービスであり、一般の方が自宅でレインズを閲覧・利用することはできません。
⑤:自己発見取引とは、知人が購入を希望するなど自分が見つけた買主との売買取引を、不動産会社の仲介を挟まず当事者だけでおこなうことです。しかし、実際にはリスクの予測と対策や紛争の解決など一般の方では手に負えない手続きが多いため、不動産取引を当事者だけでおこなうのはおすすめしません。
売出前にリフォームしてしまう
売り出し前のリフォームやリノベーションは、マンション売却のよくある失敗のひとつです。
マンションのリフォームやリノベーションには大きな費用がかかります。しかし、その費用を上乗せした金額で物件を売れる保証はないため、最終的に費用を回収できず損をしてしまう可能性があります。
また、マンションの購買層の中には、自分好みのリフォームやリノベーションを施したいが故に、安さを基準にマンションを探している人が多いです。このような人にとって、売主によるリフォームは余計な要素になってしまうので、購入希望者の範囲を狭めてしまうことになります。
物件をよく見せるために何か工夫を施したいのであれば、費用対効果の高い「水回りのハウスクリーニング」程度にとどめるのが無難でしょう。
売却期間中の失敗
マンション売却の売出前期間中にある失敗は、おもに以下の5パターンです。
- 時間に余裕がない
- 売出価格を高く設定しすぎる
- 不動産会社の担当者とのコミュニケーション不足
- 不動産会社から囲い込みを受けている
- 内覧の準備をしていない
それぞれの失敗パターンについて、詳しく確認していきましょう。
時間に余裕がない
マンションの売却には3〜6ヵ月の時間がかかることがほとんどです。さらに、春の異動シーズンを外した時期の売却なら、より長い時間がかかる傾向にあります。そのため、ある程度売却価格にこだわるのであれば、半年程度の時間を確保しておくのがベストです。
しかし、時間に追われて焦って売却すると、「なかなか売れる兆しが見えない」という事態になった場合に、大幅な値下げを余儀なくされる可能性が高いです。また、売却を焦っている売主に対しては、購入希望者からの値下げ交渉も行われやすいです。
納得のいく条件でマンションを売却するためには、事前に計画を立てて早めの行動を心がけるようにしましょう。
売出価格を高く設定しすぎる
マンションが売れない理由のほとんどは、相場と比べて売出価格が高いことです。
マンションの売出価格はある程度自由に決めることができますが、市場の状況に応じて大体の相場価格が形成されます。マンションの購入を検討している人も、SUUMOなどのポータルサイトを見ていれば、おおよその相場観を把握しています。そのため、相場よりも明らかに高い物件は、検討すらされずに、候補から外されてしまうでしょう。
これを防止するには、査定結果を真摯に受け止めることはもちろん、「レインズマーケットインフォメーション」や「土地総合情報システム」などのインターネットサイトで類似物件の成約価格を調査することをおすすめします。
不動産会社の担当者とのコミュニケーション不足
売却活動のほとんどは、不動産会社の担当者に一任されています。そのため、円滑に売却をすすめていくためには、売主と担当者のコミュニケーションが必須です。
媒介契約の種類にもよりますが、担当者は売主に対して定期的に売却活動の報告をする義務が課せられています。そのため、一定の透明性は担保されていると言えるでしょう。しかし、担当者によっては、扱っている物件に優劣をつけて優先度の低いものを後回しにしたり、意図的に他社からの購入者紹介を断るなどの悪質な行為をする場合があります。
担当者に適度なプレッシャーを与えるためにも、売主側から売却の状況を尋ねたり、抱えている不安などを相談してみるとよいでしょう。
不動産会社から囲い込みを受けている
「囲い込み」とは、不動産会社が売り手から依頼された物件を、意図的に他社に紹介しない行為を指します。
自社だけで買主を探せる状況を作ることで、最終的に売主と買主の双方から仲介手数料を受け取ることが目的です。
囲い込みを受けてしまうと、売却期間が長期化しやすく、最終的な売却価格も低くなりやすいという悪影響があります。
囲い込みされていると判断するのは難しいのですが、売却担当者へ「囲い込みをしないでほしい」とひと言伝えるだけでも防止効果はあります。
内覧の準備をしていない
内覧は、買主が実際に家の中を見て、購入するべきかどうかを決める大切な時間です。この絶好のアピールタイムを有効に使うためにも、部屋の掃除や片付けは徹底しましょう。片付いていなかったり掃除が行き届いていなかったりすると、買主からの印象が悪くなってしまい、購入意欲を削いでしまいます。自分では掃除しきれない汚れなどがある場合は、ハウスクリーニングを利用することも検討しましょう。
また、居住中の内覧では売主が立ち会いますが、買主は本心ではすべての収納や水回りなど隅々まで見て決めたいのに、売主に遠慮してしまってじっくり見て回れない場合があります。
理想的な内覧準備としては、きれいに清掃や整頓をしておいて、内覧開始時点で「満足するまで遠慮なく隅々まで見てください」と自信を持って言える状態にしておくことです。そして、住んでみて良かった点や悪かった点を整理しておき、聞かれた際に的確に伝えられるとベストです。
売却後の失敗
マンション売却後の失敗は、おもに以下の2パターンです。
- 契約不適合責任に問われてしまう
- 買主がローン審査に落ちて契約が白紙になる
それぞれの失敗パターンについて、詳しく確認していきましょう。
契約不適合責任に問われてしまう
不動産売買後に、その不動産にあらかじめ申告のない不具合が見つかれば、買主からの損害賠償や契約の解除に応じる責任があります。これは「契約不適合責任」といいます。
契約不適合責任を回避するためには、契約の時点で物件の不具合にあたる部分を全て提示しておくことが大切です。
物件の築年数が古いなど不安要素が大きい場合は、専門家がマンションの現状の不具合を調査する有償の「ホームインスペクション」を依頼するのも、契約不適合責任の履行を防ぐ一つの方法です。ホームインスペクションには数万円の費用がかかりますが、不要なトラブルを予防する効果が高いため、不安な方は不動産会社と一緒に検討することをおすすめします。
買主がローン審査に落ちて契約が白紙になる
買主は、売買契約後に住宅ローンの本申込みをしますが、万一この審査が否決されると、契約時に付与されている「住宅ローン特約」によって、売買契約が無条件で白紙に戻ってしまいます。事前に支払われている手付金も、買主に返還する必要があります。
住宅ローン特約は、買主にとってはリスクを回避できる便利な制度ですが、売主にとっては売却活動を一から始める必要があります。
このような事態を防ぐためには、買主の経済的な状況(収入など)を把握しておき、本当に自分の物件を購入できるのかを見極めることが重要です。