不動産の売却には、仲介会社を通して一般消費者に売却する仲介売却と、買取会社に売却する買取売却の2つがあります。
不動産売買の8割は前者の仲介売却と呼ばれる方法で行われています。
仲介会社を通して不動産売却をする場合は、売主と仲介会社の間で媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、それぞれにメリットやデメリット、注意すべき点があります。
この記事では3種類の媒介契約のうち、専属専任媒介契約について詳しく解説します。
【この記事で分かること】
- 専属専任媒介契約のメリットとデメリット。
- 自分が専属専任媒介契約に向いているかどうか分かる。
専属専任媒介契約以外の媒介契約についても知りたい方には、以下の記事もオススメです。
専属専任媒介契約とは
専属専任媒介契約は、1社の仲介会社に売却活動を一任する媒介契約です。
専属専任媒介契約の契約期間は、最長で3ヵ月とされています。原則として契約期間中の解除は不可能であるため、締結するかどうか、慎重に検討しましょう。
契約期間を満了しても売却を完了できなかった場合は、契約を更新するかしないかを売主が決められます。期間中の不動産会社の行動を振り返り、信頼できると感じるのであれば引き続き同じ会社に依頼するのも良いでしょう。
他の媒介契約との違い
専属専任媒介契約は、他の一般媒介契約や専任媒介契約とどのような違いがあるのでしょうか。
一般媒介契約
専属専任媒介契約は、複数の不動産会社と締結できる一般媒介契約とは違い、1社とのみ締結可能な媒介契約です。そのため、専属専任媒介契約を締結している間は別の不動産会社での売却活動はできなくなります。この点は、専任媒介契約と同じです。
専任媒介契約
専任媒介契約と専属専任媒介契約の違いは、売主自身が購入希望者を見つけて直接取引をする自己発見取引を行えるかどうかです。専属専任媒介契約締結中、仮に売主が自分で買主を見つけて物件を売却したとしても不動産会社に仲介手数料を支払わなければいけません。
専属専任媒介契約の仲介手数料
専属専任媒介契約の場合、どのような方法であっても不動産の売却が成立した際に仲介手数料の支払いが発生します。仲介手数料の計算方法や支払いタイミングを注意点と合わせて解説します。
仲介手数料の計算方法
宅地建物取引業法により仲介手数料の上限は定められています。売却価格がわかれば、法律で定められた計算式に則って仲介手数料の上限額を算出できます。
売却価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の部分 | 売却価格×5%+消費税 |
200万円超かつ400万円以下の部分 | 売却価格×4%+消費税 |
400万円超の部分 | 売却価格×3%+消費税 |
さらに200万円より高いマンションは、以下の計算式を用いて簡単に仲介手数料の上限額を算出できます。
売却価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下 | 売却価格×5%+消費税 |
200万円超かつ400万円以下 | 売却価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
それぞれのマンションを売却した際の仲介手数料は、以下のように求められます。
【150万円のマンション】
1,500,000円×5%+7,500円=82,500円
【300万円のマンション】
3,000,000円×4%+20,000円+14,000=154,000円
【1,000万円のマンション】
10,000,000円×3%+60,000円+36,000円=396,000円
仲介手数料の支払いタイミング
仲介手数料は不動産売却の中で大きな費用となります。そのため、金額だけでなく支払いタイミングも重要です。仲介手数料の支払いは、主に以下の2つのパターンがあります。
- 売買契約時と引渡し時に分けて支払う
- 売買契約時または引渡し時に一括で支払う
売買契約時に全額請求することは法的に問題ありません。しかし、売主によっては一括支払いが難しい場合もあります。その場合は不動産会社に相談し、引渡し時の支払いまたは2回払いを検討すると良いでしょう。
仲介手数料に関する注意点
専属専任媒介契約では、売主が自身で購入希望者を見つけて直接取引を行う自己発見取引が認められていません。仮に売主が見つけた相手が不動産買取業者であっても自己発見取引とみなされます。
契約期間中に購入希望者を見つけた場合でも、仲介手数料の支払い義務が発生するため注意が必要です。自己発見取引や仲介会社の変更は契約終了後に行いましょう。
専属専任媒介契約の契約期間は3ヵ月
専属専任媒介契約は媒介契約の中で最も拘束力が強く、法令により契約有効期間は3ヵ月以内と定められています。仮に3ヵ月を超える期間で契約を交わしている場合でも、有効な契約期間は3ヵ月に制限されます。
また、契約の更新については、依頼者からの申し出を宅地建物取引業者が受領することで更新されます。2回目以降の更新も同様に契約期間は3ヵ月となり、更新は自動的には行われません。契約を更新する際には必ず新たに契約書を作成し、双方で取り交わすことが必要です。この点を理解し、契約更新時には適切な手続きを行うことが求められます。
専属専任媒介契約の3つのメリット
専属専任媒介契約には、次のようなメリットがあります。
- 不動産会社が積極的に売却活動をしてくれる
- 連絡の窓口が一本化できる
- 付随サービスが利用できる
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
1. 不動産会社が積極的に売却活動をしてくれる
専属専任媒介契約の最大のメリットとも言えるのが、不動産会社が積極的に売却活動をしてくれる点です。
専属専任媒介契約では1社の不動産会社でのみ売却活動ができ、売主が購入希望者を見つけてくることはありません。ほかの媒介契約だと別の不動産会社経由で売買契約が成立したり、売主自身が買主を見つけたりした場合、不動産会社は仲介手数料を得られません。そのため「費用をかけても利益が得られない可能性がある」と考え、売却活動に消極的になってしまう不動産会社も存在します。
専属専任契約の場合、どのような形であれ売却成立=仲介手数料の発生となります。そのため、不動産会社としても安心して売却活動に注力できるのでしょう。
2. 連絡の窓口を1本に絞れる
売却活動を1社の不動産会社に一任できる専属専任媒介契約では、連絡の窓口が一本化できます。複数の不動産会社に売却活動をしてもらう一般媒介契約だと、どこの不動産会社とどのような情報共有をしたのかを管理しておく必要があったり、各社とのスケジュール調整が必要になったりします。
その一方で専属専任媒介契約であれば、契約をしている不動産会社と密にやりとりをするだけで済みます。もちろん、個人間でのやりとりが発生することはありません。取引する不動産会社を一本化するだけで情報管理の手間も省けるので、忙しい方にとっては特に大きなメリットといえるでしょう。
3. 付随サービスが利用できる
不動産会社には、それぞれ売却活動をより進めやすくするためのサービスが用意されています。代表的なものでいうと家を清掃してくれるハウスクリーニング、家をより魅力的に演出してくれるハウスステージングなどです。
専属専任媒介契約を締結している場合、これらのサービスが契約内容に含まれているケースが多いです。そのため別でサービス会社を探したり、費用を支払ったりしなくてもこれらのサービスが利用できます。
専属専任媒介契約のデメリット
ここまでの内容を読んで、専属専任媒介契約に魅力を感じた方もいるでしょう。
しかし、専属専任媒介契約には次のようなデメリットがあることも理解しておく必要があります。
- 囲い込みをされてしまう可能性がある
- 不動産会社選びに失敗したときのリスクが大きい
それぞれのデメリットについて、詳しく解説していきます。
1. 囲い込みをされてしまう可能性がある
不動産会社の中には、自社で売却と購入の両方の仲介を手がけている会社もあります。そんな会社が、売主に仲介を依頼された物件を他の不動産会社から隠すことを囲い込みと呼びます。
囲い込みをする不動産会社は売却と購入の両方の仲介を自社で行い、売主と買主の両方から仲介手数料を得ようとします。囲い込みをされると売却時期が遅れてしまったり、売却価格が低くなってしまったりするリスクがあります。
囲い込みについて詳しく知りたい方には以下の記事がオススメです。
2. 不動産会社選びに失敗したときのリスクが大きい
専属専任媒介契約では1社の不動産会社に売却活動のすべてを一任します。そのため、不動産会社選びに失敗をしてしまうと納得のいく売却活動ができなくなってしまいます。囲い込みはもちろん、仲介手数料を確実に得られることを良いことに積極的に売却活動を行ってくれないケースもあります。
本当に信用できる不動産会社、担当者なのかしっかりと見極められるようにしましょう。
信頼できる不動産会社の見極め方を知りたい方には、以下の記事もオススメです。
専属専任媒介契約が向いている人
ここまで、1社の不動産会社へのみ売却活動を依頼できる専属専任媒介契約のメリットとデメリットを紹介していきました。最後に、これまで紹介したメリットとデメリットを踏まえて、専属専任媒介契約に向いている人がどのような方なのかを解説していきます。
次のいずれかに当てはまる方は、専属専任媒介契約に向いています。
- 物件の条件が良くない人
- 相場価格よりも高く売りたい人
それぞれ簡単に解説します。
物件の条件が良くない人
売りたい物件の条件が良くないのなら、専属専任媒介契約が向いているかもしれません。
例えば人気エリアの物件であれば、売り出してしまえばすぐに購入希望者が現れるでしょう。しかし人気エリアでなかったり、築年数が経ったりする古い物件は需要が低いです。そのため、より集中的な売却活動が必要です。
条件が良くない物件の売却には、売却活動を最も積極的に進めてくれる専属専任媒介契約はぴったりといえます。
相場価格よりも高く売りたい人
物件を相場価格よりも高く売却するためには、実力のある担当者についてもらい、価格設定や広告活動を念入りに行う必要があります。
専属専任媒介契約での手厚い売却活動をしてもらうことで、相場よりも高額で売れる可能性を高められるでしょう。
専属専任媒介契約を解除出来る場合
原則、契約期間中は解除できませんが、状況によっては専属専任媒介契約を途中で解除したいケースもあるでしょう。そのような場合には、以下の手順で解除の手続きを進めるのがおすすめです。
解除したい旨を伝える
まずは不動産会社に契約解除の意思を伝えましょう。専任媒介契約の解除方法に特に決まりはなく、伝え方は電話から対面まで自由です。
ただし「言った」「言わない」で揉めるのを避けるためにも、おすすめは書面やメールなど形として残る方法での伝え方です。状況に応じて、自分に合った方法で解除の旨を申し出るようにしましょう。
猶予期間を与える
契約解除の意思を伝えた後、不動産会社に猶予期間を設ける場合があります。ただし専任媒介契約は即日解約が可能なため、必ずしも猶予期間を設ける必要はありません。
もし丁寧に解除を進めたい場合は最初に解除したい理由を伝え、その後猶予期間を設けると良いでしょう。一般的に猶予期間は3〜7日程度が目安となります。この期間中に不動産会社が改善の姿勢を見せるかどうかを判断し、改善が見られなければ契約解除となります。
通知書を作成する
専任媒介契約は電話で解除することもできます。ただし、中には書面での通知を求める不動産会社もあります。その際は、不動産会社が用意する契約解除通知書を提出しましょう。インターネットで「契約解除通知書 テンプレート」と検索すると、無料でダウンロードできるひな形もあります。
書面での通知は手間がかかりますが、契約解除を申し出た証拠として残ります。認識のズレを避けられるためおすすめです。
違約金が発生する可能性もあり
専任媒介契約期間中に他の不動産会社と契約を結ぶことは専任媒介契約違反となり、違約金が発生する可能性があります。専任媒介契約を締結している間は、いかなる理由であっても他の不動産会社と契約することはできません。もし、裏で別の不動産会社と契約をしていた場合、その行為に対して違約金が請求されます。契約期間中は、他の不動産会社との契約は避けるようにしましょう。
媒介契約の解除について知りたい方には、以下の記事もオススメです。
https://sumutasu.jp/mag/selling/contract-cancellation/
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